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飯塚組長の屋敷に着くと、やはりまだ真幸は居た。
真春と会う為に、真幸が今日は呼ばれたのかと工も理解した。

「あらま。なんでお前まで?」

真春と一緒に工も付いて来たので真幸は驚く。

「新宿の様子見を行った先で会いました」

真春は、工が真幸、戸籍上自分の甥に当たる男には優しい目を向けたのがムカついた。

「あ、そう」

真幸はじっと真春を見つめた。
真春は自分によく似た真幸を敵視した。

「睨まないでよ“叔父さん”」

笑いながら真幸が言うと、真春はプイと顔を背けた。


これが俺の息子か。
やだねー。俺に顔、そっくりじゃん。


フフフと笑いながら真幸は真春を見つめる。

「あんま見るなよ。見せもんじゃねぇんだよ」

真春はそう言うと、飯塚組長の前に座った。

「全く、逃げられると思ったか?」

笑いながら飯塚組長は言う。

「あそこのデッカいのが居なければ逃げられたね」

工を指さして真春は言う。

「ほうほう。お前のおかげで、儂の子分も首の皮が繋がったってことかい」

楽しそうに言いながら飯塚組長は工を見る。

「いえ、俺はたまたま遭遇しただけですので」

工は正座をして頭を深々下げる。

「さて、叔父さんも無事到着したことだし、俺も帰りますよ」

真幸が言うと、工も立ち上がった。

「待って!」

真幸と工が並んで真春を見る。

「父さん!あの男を俺に付けて。あいつを俺の用心棒にして!」

はあ?と言う顔で真幸と工は真春を見つめる。

「この家にいる条件だよ!いいでしょ?」

工はやれやれと困った顔をする。真幸は面白くなって来たとニヤニヤ笑う。

「うーん。そう言っても奴は真幸の用心棒だしなぁ」

飯塚組長が渋ってくれて工はホッとした。

「じゃあ、この家には住まない!」

反抗的な態度に飯塚組長は笑う。

「この家を出てホームレスにでもなるか?向こうの家にももちろん帰さん。今までの学費も一括で支払ってもらうが?」

飯塚組長は笑っているが、目は笑っていない。真春は何も言い返せない。
完全に真春の負けである。

「人の物が欲しけりゃ自分で物にせにゃなぁ。頼ったら借りが出来る。借り作ったら終いなんだよ。貸しを作る男にならねぇとな」

飯塚組長の言葉が真春は悔しかった。

「分かったよ!じゃあ、そいつ掛けてあんたと勝負するよ!」

真春はそう言うと真幸を睨む。

「おいおい、あいつに何したんだよ。どっぷり惚れられてるぜぇ」

楽しそうに真幸は言う。工は頭痛がして来た。

「で?勝負って何すんのー?工のためにタマはかけたくねぇなぁ」

あははと真幸は笑う。
真春はスポーツバックから何かを出して畳に投げつけた。

「ん?」

UNOだった。

「え?マジ?これで?」

真幸はキョトンとする。

「仕方ねえだろ。これしか勝負できそうなもの持ってねえんだよ!」

真っ赤になって真春は言う。

「お前、ルール知ってる?俺知らねーんだけど」

ポツリと真幸が工に聞く。

「ええ、まぁ。ただ2人でやっても」

「知ってるなら、お前がやれよ。俺は正直お前があいつの用心棒になっても良いし」

真幸の言葉に工は真幸を睨む。

「自分のケツは自分で拭きな」

真幸が楽しんでるのがよく分かる。仕方なく工が受けて立つことにした。
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