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Act.2《これが、初恋なんだね。》

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カツカツとヒールの音を立てながら、アパートの一室に向かう若い女の姿。
ドアノブに手をかけると、鍵がかかっていないドアを一気に開けた。

「秀治、久しぶりー!やっとエッチ解禁なったって言うから急いで来ちゃった」

秀治のアパートの部屋に、その若い女が入ってきた。

「ノックぐらいしろよ」

ベッドに寝っ転がって、テレビを見ていた秀治は面倒臭そうに女に声をかけた。

「だって、玄関の鍵開いてたもん」

女は秀治の横に一緒になって寝っ転がった。

「ねぇ、やっと会えたんだもん。早くエッチしよ。もう、我慢できないよぉ」

女が甘える顔を見ながら、秀治は実子を思い出した。
あの後、実子に手を伸ばして抱きしめようとした時に浩二が現れた。
浩二の姿を見た途端、実子はとびきりの笑顔を浩二に向けた。その目は、とても安心しているようだった。
浩二も何も言わずただ優しく実子を見つめた後、秀治にも優しい目を向けた。
秀治は実子の様子を見て、自分の前では怖かったのを我慢していたのに、浩二には安心して笑顔になれるんだと思うと、浩二が羨ましくて嫉妬してしまった。
もう少し早く素直になれば、自分の腕の中に実子を抱きしめてあげられたのにと思った。
実子のようなピュアな女を、自分も本当は欲していたんだと気付く。
でも、それももう遅い。
素直に態度に表していた浩二に勝てるはずもなかった。
そんな幸せそうなふたりを見て、今まで感じたことのない感情を、この数日何度気付かされたかと思った。

「お前さ俺の顔見て、それしか言う事ない訳?エッチしかない訳?俺の身体だけが目的かよ」

呆れながら秀治が言うと、女はふふふと笑う。

「だって秀治とのエッチ、めっちゃ気持ちいいんだもん!ほらぁ早くぅ」

抱きつく女に秀治は呆れながらも笑う。
自分だって目の前の女に愛情を持っているわけでもないのに、それを相手に尋ねるのは違うと思った。
女はジーパンから秀治のモノを出すと、愛おしそうに扱きしゃぶりだした。
問題の川勝は、伊丹の逆鱗に触れたため根こそぎ手を回され、川勝の父親の解体屋も伊丹の手で潰された。
川勝の極日連合のアジトは違法薬物を押収され、所轄のマル暴の刑事に結局逮捕された。
全て裏で伊丹が動いたことは雅楽から聞いた。


 会長だけは敵に回したくねぇわ。


しみじみと雅楽がいつか言った言葉を秀治は思い出していた。
まだまだ自分としては用心棒としては半人前だが、秀治の任務が無事終わったことで雅楽が宮田に言ってくれたのか、とりあえずのご褒美と宮田も女は解禁してくれた。
解禁になったこともあり、つい実子に対しての寂しさを感じ、この女に秀治は電話をしてしまった。
女は下着を脱ぎ秀治に跨り、硬く反り返るモノを支えながら腰を落とそうとしていた。モノの先に生暖かく濡れる蜜が触れる瞬間、秀治は女を振り解きベッドから起き上がった。
女はキョトンとして秀治を見つめる。

「お前、帰れ」

秀治の言葉に女はアホ面で秀治を見つめる。

「え?何で?」

「何でもだよ。抱く気になんねぇ」

秀治の言葉に女はムッとする。

「何よ!解禁なったとか美味しいこと言っておきながら、帰れってどう言うこと!禁欲生活長くてエッチの仕方忘れた?」

ムキになって女は言う。

「はいはい、なんでもいいよ。良いからそれ履いてさっさと帰れ」

秀治はジーパンにモノをしまうと、女に下着を投げ、面倒臭そうに女をグイグイとベッドから出そうとする。

「何よ!バカ!インポ!ヤリチンすぎて勃たなくなったんでしょ!」

しっかり勃っていたが、女は罵声を秀治に浴びせる。
実子との会話を思い出して、本当に自分は、いかに適当に遊んできたのかと反省しながら笑う。

「サイッテー!」

女の言葉に、自分でもそう思うなと秀治は苦笑した。
ムカつきながら下着を着けた女を秀治は部屋から追い出し、玄関のドアを閉めて鍵をかけると女も諦めて帰って行った。
秀治は1人になるとホッとした。
なぜか今の自分に満足感があった。
特に何も目的もなく、目標もなく、ただこの生活を続けていたが、用心棒の成城に出会って自分の力を知りたいと思った。
幼い美奈子と数日過ごす中で、大切な存在を守りたいと思った。
そして、実子と浩二を見て、本気の恋も良いもんだと知った。
まだ誰かを本気で好きになったことがないなと秀治は思いながら、なぜか実子が浮かんだ。
実子と接しているのが楽しかった。
浩二の元に寄り添う実子の姿に何故か切なさを感じた。

「あれ?なんだ?これ」

心の中が、何故かポッカリと穴が開いたような感覚。
実子の笑顔を思い出すだけで、何故こんなにも切なくなるのか分からない。
それでも、浩二と結ばれた実子を祝福している自分。
正直に言えば、無理矢理祝福している自分。

「あははは。なんだこりゃ。何でこんな気持ちになってる訳?」

締め付けられるような胸の痛みを感じながら、秀治は実子の笑顔をずっと目に浮かべていた。
浩二のように、自分も実子に好意を寄せていたと気付いた。
ただ、これが恋だと自覚が出来なかった。
恋に不器用な男は失恋して初めて、それが恋だと知った。

「バカだなぁ。俺って」

秀治はそう呟くと、可笑しくもないのに笑うしかできなかった。
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