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Act.2《これが、初恋なんだね。》

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夕方を過ぎると保育園はお迎えラッシュになる。

「実子先生、さようならー」

可愛い天使達を笑顔で見送り、実子は美奈子の側による。
美奈子は就園時間ギリギリまで過ごすことが多いので、最近では実子が一緒に遊んで待つことが多かった。

「美奈子ちゃん、お迎えでーす」

実子は美奈子にリュックを背負わせて玄関に一緒に行く。
今日のお迎えも父親だった。

「パパ!」

嬉しそうに美奈子は父親にしがみつく。
最後まで残るのは確かに寂しいし不安なものだ。
実子も美奈子の笑顔にホッとした。

「いつもギリギリですみません」

美奈子の父親は頭を下げる。

「いえ!気にしないでお仕事頑張ってください!」

実子の笑顔に美奈子の父親もホッとして美奈子を連れて帰って行く。

「残念だったわー。今日もパパさんか」

先輩保育士が残念そうに廊下をモップ掛けしている。

「最近美奈子ちゃんのお兄ちゃんを見てないからイケメン不足だわー」

先輩保育士の言葉に実子は笑う。
実子は1度しか見たことはないが、確かにみんながイケメンと言うので顔は覚えていた。

「この仕事嫌いじゃないけど出会いがないのよねぇ。あー、美奈子ちゃんのお兄ちゃんみたいなイケメンじゃなくて良いから早く彼氏欲しいわ」

実子も掃除をしながら先輩保育士の愚痴に付き合う。

「実子先生は彼氏いそう。どんな人?」

興味津々で聞かれて実子は困った。

「い、今は、いないんですよ」

そう答えたものの、実子はまだ1度も彼氏がいたことがなかった。
25歳で処女だとはなかなか言えず、そういう話題の時は誤魔化すしかない。

「別れちゃうと次見つけるの大変よねぇ。私も別れるんじゃなかったぁ」

先輩保育士がぼやきながら他の教室の掃除に移った。
実子はため息をつく。
男と付き合うと言うのが、どう言うことなのか理解ができない。
全くモテなかった人生だと言うことはないが、引っ込み思案な性格ゆえに、人見知りも多少あった。
合コンに行っても大人しくて、気がつけば男との接点がだんだん減っていっていた。
年だけ取ってしまい、そして、付き合う相手に処女だとバレるのが年々怖くなる。
そうして頭だけで考えて、どっぷりとお一人様の生活に浸かってしまって来たのだった。
こんな自分ではいけないと思いながらも、保育士になってからは本当に出会いが全くなくなってしまった。
今更慌ててもと自分に言い聞かせるが、誕生日やクリスマスの時期は辛くなる。

「お見合いパーティー行ってみたら?」

友人達にそう簡単に言われても、実子の性格で1人でそんな所は怖くて行けない。
それでもいつかは素敵な人と恋人になれたらと、淡い期待に胸を膨らませていた。
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