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Act.1《危険な香りの男性が、初めての男-ヒト-でした。》

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成城は玄関の鍵を開け部屋の中に入った。
部屋の中が暗く、成城は嫌な予感がした。

「ゆあ?」

リビングのソファにゆあは体を丸めて横になっていた。
顔が赤い。
潤んだ目で成城を見つめている。
ゆあが居たことで、とりあえず成城はホッとした。

「お兄ちゃん…………お帰り、なさい」

弱々しい声のゆあに、成城は何があったのか分からず、ゆあの異変に心臓が激しく鼓動を打つ。

「どうした!何があった!」

成城がゆあの肩を掴むと、ゆあはビクビクと震えた。

「やぁッ!」

ゆあが成城を拒否した。
非力な力ながら成城から離れようとする。

「ゆあ?どうした?」

ゆあは成城から目を逸らし、DVDのデッキを指さす。
成城はゆあから離れるとデッキを確認した。中にDVDが入っていたので再生したがゆあは顔を背けた。
しばらくして成城は、画面から映し出された映像に目を見開いた。
成城が女とセックスをしている画像が流れた。

「……これは、どうした?」

静かな声で成城は尋ねる。

「学校から帰ったら、ポストの中に、メール便が入ってて。どうしてここに、私が居るのを知っているのか分からなかったけど、私宛だったからなにかと気になって、中を開けたの。そしたら……その、DVDが…………」

開けたまでは良かったが、まさかそれが、成城と女がセックスしている場面が撮影されたものだとは思いもよらなかった。

「びっくりしたの!そのうち、私ッ!私!」

ゆあは恥ずかしそうに震えている。
体を抱きしめ丸くなって成城を見ない。

「すまなかった。驚かせて」

成城はDVDを取り出すと真っ二つに割った。
成城もゆあが見れない。
成城の女がゆあの名前を調べて、放って置かれた腹いせに送ってきたんだと思った。

「起きれるか?」

成城が優しく微笑んでゆあに手を差し出すが、ゆあはその手を触れられない。

「……お兄ちゃん…………私、私ッ」

泣きそうな顔でゆあは成城を見つめる。

「私、変なの!ヤダッ!」

両手で顔を隠してゆあは泣く。

「どうしたんだ?変って?どこか痛いのか?」

訳がわからず成城はゆあに触れることもできない。
ゆあを観察すると、太腿をぴったりと着け、モゾモゾと震えている。

「……熱いの。どうしてッ!」

ゆあの告白に成城は声が出なかった。
成城の映ったDVDを見て、ゆあが濡れたと分かった。
ゆあは、成城が女を抱く事に嫉妬しながら、成城の相手が自分だったらと思い、初めて女として感じてしまった。
それが恥ずかしくて、成城に知られたくなかった。

「お兄ちゃん……」

ゆあの潤んだ目に、成城は鼓動が早くなる。
17まで、男女の色事も穢れも知らず過ごした少女の初めての性の芽生え。
ゆあが甘い香りを放ち成城を刺激する。
もう成城も我慢出来なかった。
ゆあを女として見ないようにすればするほど、愛おしさが増していた。
ゆあが自分を男として好意を持って見ているのを知っていた。
それを分かっていて認めたくなかった。
怖かった。
自分がゆあを求めるのが。
ゆあを傷つけるのが。
ゆあを自分の手で壊すのが怖かった。
でも、もう自分を抑えられない。
もう直ぐ自分の前から消えていくゆあが、欲しいと自覚してしまった。

「……ゆあ。大丈夫だから」

成城の言葉にゆあは首を振る。

「いやッ!恥ずかしい!」

成城はゆあを落ち着かせようと抱きしめようとするが、ゆあは震えて成城を拒絶する。

「怖くないから!俺がお前を受け止める!」

ゆあは成城が言っている意味がわからない。

「いやぁッ!やだ!お兄ちゃんにバレたくない!こんな私、やだッ!」

ゆあは身を丸めて抵抗を続ける。

「俺が鎮めてやる」

成城はそう言うとゆあの唇に唇を重ねた。
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