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前に進む勇気
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美奈子は一人の部屋で龍彦のことを考えていた。
仕事以外では素っ気ない龍彦に美奈子は寂しい。
しかも龍彦と千秋が同じ会社だと知り、龍彦に千秋との関係がバレたらと不安になってしまう。
まさか私と不倫した事あるなんて、わざわざ亘理さんにそんな事喋ったりしてないよね。
亘理さんには知られたくない。
一人でいると、孤独と不安に美奈子は耐えきれなくなる。
どうして龍彦に対してこんなに固執してしまうのか、美奈子自身分かっていなかった。
それなのに思いばかりが募り辛くなり、それならいっそ、龍彦に自分の気持ちを聞いてほしいと思ってしまう。
もしかしたら、振り向いてもらえるかもしれない。
そう自分に言い聞かせると、その後の打ち合わせで会社にやって来た龍彦に美奈子は声をかけた。
「お疲れ様でした。飲み物を買いに行くところだったので、玄関までご一緒させてください」
もうそばに寄ってほしくもなかったが、龍彦は無言で美奈子と並んで歩いて玄関へ向かった。
「では、ここで。失礼します」
龍彦が挨拶して美奈子にお辞儀をすると、美奈子は慌てて龍彦を引き止めた。
「あのッ、私、亘理さんに相談したいことがあるんです。伊藤さんのことで」
美奈子が縋るような目で龍彦を見るが、龍彦は怪訝そうな顔でただ美奈子を見る。
「伊藤さんのことって、仕事のことですか?プライベートな事だったら聞かされても困るんですが」
龍彦は美奈子と関わりを持ちたくなかったので、プライベートで関わるのは困るとはっきり伝えた。
伊藤を使うのは無理だと判断した美奈子は、自分の気持ちを単刀直入に伝えようと龍彦に近付き上目遣いで見つめる。
「実は、私、亘理さんが気になるんです。だからもっと亘理さんを知りたい。私のことも知ってほしい」
美奈子の相談が、伊藤の話では全く無いことに龍彦は呆れる。
話しかける口実だったのかと思うと余計に腹が立ってきた。
「そう言うの本当に困ります。川瀬さんも知ってる通り俺には彼女がいるし。それに川瀬さん……うちの西川と付き合ってましたよね?」
突き放そうと龍彦は尋ねる。
龍彦にバレていたことに、美奈子は一気に恥ずかしくなり真っ赤になった。
「あの……聞いているんですか?」
「ええ。全て知ってますから。西川と不倫関係だったことも」
トドメを刺すように龍彦は言い放つ。
千秋との仲を知っていたせいで、今日はやけに龍彦が冷たいのかと美奈子は焦る。
「違うんです!私たち、愛し合っていたとか、そう言うことじゃなくて。でも、亘理さんのことは本気です!」
美奈子の言葉に龍彦は嫌悪する。
千秋と愛し合っていないのに、美紅の幸せを奪った美奈子が憎い。そして、いくら美紅と龍彦が恋人同士だと知らないとは言え、それを平然と言ってのける美奈子に呆れ果ててしまった。
「……俺は本気で恋人を愛してるので、川瀬さんのことは全く眼中にないです。だから今後一切、そう言う話はやめてください」
龍彦は美紅のことを、美奈子には絶対に話したくない。
美紅が千秋の元妻と知って、万が一美奈子がおかしな行動をして美紅を傷つけたらと思うと怖かったからだった。
「失礼します」
美奈子は立ち去る龍彦の背を見つめ、千秋と関係してしまったことを後悔しながらも、どうしても龍彦の事が諦めきれなかった。
仕事以外では素っ気ない龍彦に美奈子は寂しい。
しかも龍彦と千秋が同じ会社だと知り、龍彦に千秋との関係がバレたらと不安になってしまう。
まさか私と不倫した事あるなんて、わざわざ亘理さんにそんな事喋ったりしてないよね。
亘理さんには知られたくない。
一人でいると、孤独と不安に美奈子は耐えきれなくなる。
どうして龍彦に対してこんなに固執してしまうのか、美奈子自身分かっていなかった。
それなのに思いばかりが募り辛くなり、それならいっそ、龍彦に自分の気持ちを聞いてほしいと思ってしまう。
もしかしたら、振り向いてもらえるかもしれない。
そう自分に言い聞かせると、その後の打ち合わせで会社にやって来た龍彦に美奈子は声をかけた。
「お疲れ様でした。飲み物を買いに行くところだったので、玄関までご一緒させてください」
もうそばに寄ってほしくもなかったが、龍彦は無言で美奈子と並んで歩いて玄関へ向かった。
「では、ここで。失礼します」
龍彦が挨拶して美奈子にお辞儀をすると、美奈子は慌てて龍彦を引き止めた。
「あのッ、私、亘理さんに相談したいことがあるんです。伊藤さんのことで」
美奈子が縋るような目で龍彦を見るが、龍彦は怪訝そうな顔でただ美奈子を見る。
「伊藤さんのことって、仕事のことですか?プライベートな事だったら聞かされても困るんですが」
龍彦は美奈子と関わりを持ちたくなかったので、プライベートで関わるのは困るとはっきり伝えた。
伊藤を使うのは無理だと判断した美奈子は、自分の気持ちを単刀直入に伝えようと龍彦に近付き上目遣いで見つめる。
「実は、私、亘理さんが気になるんです。だからもっと亘理さんを知りたい。私のことも知ってほしい」
美奈子の相談が、伊藤の話では全く無いことに龍彦は呆れる。
話しかける口実だったのかと思うと余計に腹が立ってきた。
「そう言うの本当に困ります。川瀬さんも知ってる通り俺には彼女がいるし。それに川瀬さん……うちの西川と付き合ってましたよね?」
突き放そうと龍彦は尋ねる。
龍彦にバレていたことに、美奈子は一気に恥ずかしくなり真っ赤になった。
「あの……聞いているんですか?」
「ええ。全て知ってますから。西川と不倫関係だったことも」
トドメを刺すように龍彦は言い放つ。
千秋との仲を知っていたせいで、今日はやけに龍彦が冷たいのかと美奈子は焦る。
「違うんです!私たち、愛し合っていたとか、そう言うことじゃなくて。でも、亘理さんのことは本気です!」
美奈子の言葉に龍彦は嫌悪する。
千秋と愛し合っていないのに、美紅の幸せを奪った美奈子が憎い。そして、いくら美紅と龍彦が恋人同士だと知らないとは言え、それを平然と言ってのける美奈子に呆れ果ててしまった。
「……俺は本気で恋人を愛してるので、川瀬さんのことは全く眼中にないです。だから今後一切、そう言う話はやめてください」
龍彦は美紅のことを、美奈子には絶対に話したくない。
美紅が千秋の元妻と知って、万が一美奈子がおかしな行動をして美紅を傷つけたらと思うと怖かったからだった。
「失礼します」
美奈子は立ち去る龍彦の背を見つめ、千秋と関係してしまったことを後悔しながらも、どうしても龍彦の事が諦めきれなかった。
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