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前に進む勇気
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龍彦は次の日、千秋が昼食を取りに行くタイミングで声をかけた。
「西川さん。ちょっと良いですか?」
千秋は振り向き龍彦を見ると軽く頷いて、二人は本社ビルを出て近くの定食屋に入った。
「どうして突然、美紅に連絡してきたんですか?俺との関係を知りたかったのなら、いつでも俺に聞いてくれて良かったのに」
千秋はトンカツ定食を頼むと、お冷のグラスに口をつけた。
「美紅から本当の事を聞きたかった。それに癪だったから亘理からは聞きたくなかった」
子供じみた言い訳に、龍彦はため息をついた。
「美紅は西川さんと関わりを持ちたくないんです。余計なことしないでくださいよ」
「余計なこと?」
「もう美紅は俺の恋人です。ちょっかいかけるような真似をしないでくださいと言う意味です」
龍彦の言葉に、千秋はフッと笑う。
「俺が美紅に電話したくらいで揺らぐ関係なのか?」
とんかつ定食が運ばれてくると、千秋はとんかつにソースをかけた。
龍彦の前には、唐揚げ定食が運ばれてきた。
「俺と美紅の関係が揺らぐはずはないでしょ。俺は美紅だけを見てる。だけど、美紅はあなたに裏切られて、それがトラウマになってる」
トラウマと聞いて千秋は味噌汁を飲む手が止まった。
「信じていた相手に結婚して半年で浮気されて、その傷が簡単に癒えると思っているんですか?」
「苦しめたのは分かってる。美紅なりに俺に対して努力して歩み寄ろうとしてくれたことも。本当はまだ後悔してる。週末だけの生活の時に、何がなんでも許してもらうべきだったって」
「でも西川さんは諦めたじゃないですか。癪だけどあの当時、美紅は本気であなたとやり直す気持ちも有ったんだ」
腹立たしい気持ちを抑えながら龍彦は胸中を告白する。
千秋は、そうだったと思うと同時に、自分の努力が足りなかったことに再び後悔する。
「美紅が、どうしても俺を許せないと言ったんだよ。あの時の俺は確かに美紅に許してもらえる人間じゃなかった。せっかく週末に戻ってくれたのに、俺は美紅の機嫌を取ることしか頭になかった。自分の過ちを許してもらうことしか考えてなかった。もっとちゃんと話し合うべきだったと。失ってから言っても仕方ないけどな」
千秋の中でも、色々葛藤があったんだと龍彦もそれは汲み取れた。
それでも、美紅を離したのは千秋だとも思った。
「……亘理に頼みたいことがある。ここでは話せないから今夜時間作れないか?」
「なんですか?突然。もう俺は西川さんの頼みを聞くつもりはありませんよ。それより、俺が聞きたい事は他にあります」
龍彦が拒否すると、千秋はフッと息を吐いた。
「聞きたい事は、川瀬の事だろ?俺も川瀬美奈子の話がしたい」
美奈子の名前を聞いて、龍彦はやはり美奈子が離婚の原因だったのかと思った。
「きちんと亘理に話しておきたい。お前が本気で美紅を守りたいと言うなら、俺の話を聞いて欲しい」
そこまで千秋に言われては、今夜断る理由もなく龍彦は了承した。
そして話を全て聞くまでは、千秋と会うことは美紅に黙っておこうと思った。
「西川さん。ちょっと良いですか?」
千秋は振り向き龍彦を見ると軽く頷いて、二人は本社ビルを出て近くの定食屋に入った。
「どうして突然、美紅に連絡してきたんですか?俺との関係を知りたかったのなら、いつでも俺に聞いてくれて良かったのに」
千秋はトンカツ定食を頼むと、お冷のグラスに口をつけた。
「美紅から本当の事を聞きたかった。それに癪だったから亘理からは聞きたくなかった」
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「美紅は西川さんと関わりを持ちたくないんです。余計なことしないでくださいよ」
「余計なこと?」
「もう美紅は俺の恋人です。ちょっかいかけるような真似をしないでくださいと言う意味です」
龍彦の言葉に、千秋はフッと笑う。
「俺が美紅に電話したくらいで揺らぐ関係なのか?」
とんかつ定食が運ばれてくると、千秋はとんかつにソースをかけた。
龍彦の前には、唐揚げ定食が運ばれてきた。
「俺と美紅の関係が揺らぐはずはないでしょ。俺は美紅だけを見てる。だけど、美紅はあなたに裏切られて、それがトラウマになってる」
トラウマと聞いて千秋は味噌汁を飲む手が止まった。
「信じていた相手に結婚して半年で浮気されて、その傷が簡単に癒えると思っているんですか?」
「苦しめたのは分かってる。美紅なりに俺に対して努力して歩み寄ろうとしてくれたことも。本当はまだ後悔してる。週末だけの生活の時に、何がなんでも許してもらうべきだったって」
「でも西川さんは諦めたじゃないですか。癪だけどあの当時、美紅は本気であなたとやり直す気持ちも有ったんだ」
腹立たしい気持ちを抑えながら龍彦は胸中を告白する。
千秋は、そうだったと思うと同時に、自分の努力が足りなかったことに再び後悔する。
「美紅が、どうしても俺を許せないと言ったんだよ。あの時の俺は確かに美紅に許してもらえる人間じゃなかった。せっかく週末に戻ってくれたのに、俺は美紅の機嫌を取ることしか頭になかった。自分の過ちを許してもらうことしか考えてなかった。もっとちゃんと話し合うべきだったと。失ってから言っても仕方ないけどな」
千秋の中でも、色々葛藤があったんだと龍彦もそれは汲み取れた。
それでも、美紅を離したのは千秋だとも思った。
「……亘理に頼みたいことがある。ここでは話せないから今夜時間作れないか?」
「なんですか?突然。もう俺は西川さんの頼みを聞くつもりはありませんよ。それより、俺が聞きたい事は他にあります」
龍彦が拒否すると、千秋はフッと息を吐いた。
「聞きたい事は、川瀬の事だろ?俺も川瀬美奈子の話がしたい」
美奈子の名前を聞いて、龍彦はやはり美奈子が離婚の原因だったのかと思った。
「きちんと亘理に話しておきたい。お前が本気で美紅を守りたいと言うなら、俺の話を聞いて欲しい」
そこまで千秋に言われては、今夜断る理由もなく龍彦は了承した。
そして話を全て聞くまでは、千秋と会うことは美紅に黙っておこうと思った。
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