優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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真実の扉が開き始めた

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週が開け、いつもなら千秋からLINが来る時間だが、千秋からのLINが来なくて美奈子は不安になる。
金曜日の夜、千秋との会話中に、千秋が不自然に電話を切った事が気になって仕方ない。


 もしかして、奥さんに聞かれたのかしら?


色んな事が頭の中を駆け巡る。
心配になり千秋にLINを送るが、既読にもならずに美奈子は余計に不安になった。
そしてその気持ちを引きずるように、裕介が帰ってきてからも美奈子はどこか心ここに在らずのままだった。

「美奈子?どうした?元気ないけど、具合でも悪い?」

裕介の声に美奈子は裕介を見る。
2人での夕飯の席で、箸が進まない美奈子に裕介は尋ねた。

「あ、ううん。何でもないの。昼間掃除をやり過ぎちゃったみたいで疲れてるのかも」

美奈子は裕介に心配されないように誤魔化した。

「そっか。普段から綺麗にしててくれるから本当に毎日気持ちがいいよ。僕も休みの日は手伝うから、あまり根を詰めないでくれよ」

裕介の優しい言葉に美奈子は微笑む。
いつだって労ってくれて、美奈子がする事を褒めてくれる。
否定されたことも一切ない。
浮ついた自分にはもったいないほどの夫だと分かっている。

「友樹が今年小学校に入学だから、もう毎日嬉しくてランドセル背負ってるんだって」

「え?」

裕介が話していた内容が頭に入っていなくて、美奈子は聞き返してしまった。

「あ、聞いてなかった?兄さんの所の友樹の話だよ。ごめん、疲れてるのにつまらない話しして」

「ううん。ごめんね、ボーッとしちゃった」

いつもと違う美奈子の様子に、裕介はまだ自分は美奈子を満足させていないかと思った。

「大丈夫だよ。でももし、僕がまだ美奈子にストレスを与えてるなら言って欲しいな。ずっと放って置いた僕が言えることじゃないと思うけど」

裕介なりに、レスだった期間を埋めるようには努力をしていた。
もちろん美奈子を愛しているから、美奈子を求めてもいる。無理矢理美奈子の機嫌を取るために抱いている訳ではない。

「裕介は何も悪くないのッ!本当に今夜は疲れてるだけ。私、裕介がまた私に触れてくれて嬉しいんだよ。私は裕介だけだからッ!」

美奈子はそう言ってハッとした。
自分には愛する裕介が目の前にいる。
もう、千秋と繋がりを持ってはいけないと思った。
突然千秋と連絡が取れなくなったのは不安要素ではあるが、もう千秋とはこのまま連絡を取るのはやめようと思った。
これ以上は裕介を傷つけたくないと、自分の過ちを隠し通そうと決めた。
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