優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

文字の大きさ
上 下
66 / 195
繋がる体と募る不安

18

しおりを挟む
龍彦から千秋に聞く勇気は貰ったものの、やっぱり同性の意見も聞きたいと思い、美紅は大学時代の友人の羽田絹子にも相談する。

「急に変な相談なんだけどさ」

『どうした?珍しく声が暗いじゃん』

声のトーンで分かってくれるなんて、流石親友だと美紅は思った。

「実はね、最近、ちょっと千秋さんの行動が変でさ」

『なになに?まだ半年ぐらいで、浮気でもされちゃったの?』

絹子の直球に、美紅はグッとなる。

「それがよく分かんなくてさッ!」

美紅は自分が怪しく感じる事を全て絹子に話す。
仕事で飲みに行っているはずなのに領収書をもらってきてないこと、子供ができないことにホッとしていること、LINの音をわざと消していること。龍彦から聞いた退社時間のことなど。
確かに仕事で夜に接待や土日出勤をしているのは、自分も千秋のアシスタントをしていたので分かっている事で、その点は仕方ないと思っている。
だからその時に浮気をしているとは思えないが、なぜか行動が怪しく思えて仕方ないと感じるままを話した。

『なるほどね。でもその程度だと浮気って感じないなぁ。ちゃんと家にも帰ってるし、仕事以外の休みの日は一緒に過ごしてるんでしょ?それでも気になるなら疑心暗鬼になってないで、冗談ぽく浮気してないか聞きてみれば?最近LINの音を消してる?とか、もしかして仕事と言いながらどこか寄り道してる?みたいな感じで』

絹子のアドバイスはよく分かる。でも実際は、どう切り出していいか美紅は分からない。
今はただ美紅が不安に思っているだけで、決定的な証拠があるわけでもないし、千秋から愛されているのも嘘ではない。
どうやってさりげなく聞けば良いか美紅は考えた。

「とりあえず今夜、LINの事だけちょっと聞いてみるよ。それが1番引っかかった事だから」

『うんうん。西川さんに限って浮気とか想像つかないから、美紅の取り越し苦労だと思うけどね』

絹子の優しい言葉に美紅は不安が薄れてきた。

「話聞いてくれてありがとう。やっぱり持つべきものは親友だ」

『なんでも話聞くから、溜め込んじゃダメだよ。あんたは何にでも真面目すぎるんだから』

「はーい。じゃあ、またね」

絹子に聞いてもらってスッキリしたところで、千秋もしばらくして帰ってきた。

「お帰りなさい」

「ただいま。なんかご機嫌だね。良いことあった?」

美紅の笑顔を見て千秋は尋ねる。

「久しぶりに絹子と長電話したからかも。あ、そう言えば最近、千秋さんのLIN減ってない?音が全然鳴らなくなったよね」

不自然じゃなかったかな?と思いながら美紅は千秋に聞いてみた。
千秋はネクタイを緩める手が止まる。

「LIN?ああ、前に仕事中に来た時に消したんだっけ。どうせ仕事ではプライベートのLINは使ってないしね。元々あまりLIN来ないから気にしてなかった」

千秋は美紅を見ないようにネクタイを外しながら、本当はドキドキしながら言い訳をした。

「そうだったんだ。前にグループLINも音が鳴らなかったから、どうしたのかなって思って」

美紅はそう言いながら、音が出ない理由を聞いてホッとした。
千秋はホッとしている美紅を見て、内心では心が痛んだ。
疑われているかもと感じながら、それでも美奈子とのLINを辞める選択肢は無かった。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

最後の恋って、なに?~Happy wedding?~

氷萌
恋愛
彼との未来を本気で考えていた――― ブライダルプランナーとして日々仕事に追われていた“棗 瑠歌”は、2年という年月を共に過ごしてきた相手“鷹松 凪”から、ある日突然フラれてしまう。 それは同棲の話が出ていた矢先だった。 凪が傍にいて当たり前の生活になっていた結果、結婚の機を完全に逃してしまい更に彼は、同じ職場の年下と付き合った事を知りショックと動揺が大きくなった。 ヤケ酒に1人酔い潰れていたところ、偶然居合わせた上司で支配人“桐葉李月”に介抱されるのだが。 実は彼、厄介な事に大の女嫌いで―― 元彼を忘れたいアラサー女と、女嫌いを克服したい35歳の拗らせ男が織りなす、恋か戦いの物語―――――――

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

お父さんのお嫁さんに私はなる

色部耀
恋愛
お父さんのお嫁さんになるという約束……。私は今夜それを叶える――。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

鳴宮鶉子
恋愛
御曹司とお試し結婚 〜3ヶ月後に離婚します!!〜

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

処理中です...