優しいあなたは罪な人

五嶋樒榴

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繋がる体と募る不安

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千秋は日曜日に久しぶりに寝坊をして、美奈子に軽くおはようのLINだけ送った。
美紅は朝から普通に家事をして、千秋をそのまま寝かせていた。

「おはよう」

10時過ぎに千秋はようやく起きた。

「おはよう千秋さん。お腹すいた?」

起きてきた千秋に笑顔を向けた美紅は、ダイニングテーブルで使っていたパソコンの画面を閉じて立ち上がった。

「んー。とりあえずコーヒーだけで良いや。パソコンで何してた?」

「企画書を考えてた。何かに残しておかないと忘れちゃうから」

美紅の頑張りを千秋はいつも凄いと思っている。
可愛くて、性格も良くて、嫌な顔一つせずに与えられた以上の仕事に向き合う。
本社でも、男女問わずみんなに可愛がられていた美紅。


 「原田さんて可愛いよな」

 「結構スタイルも良いし、脱いだら凄い系じゃね?」

 「あー、でもさ、キャリア志向高いじゃん。結婚向きじゃないかもね」

 「それ、逆にポイント高くね?自立してる女の子好き」

 「えー。逆に結婚しても、家事とかきちんとして家庭守ってくれそうじゃん」

 「どっちにしても付き合ってみたいタイプ」

 「あはは。本音はそれな。口説いてみようかな」

 「えー。俺が先に目をつけてたのに」

 「原田は無理っすよ。見てれば分かるじゃないですか。簡単に落ちるような女じゃないっすよ」

 「ナニナニ?亘理も原田さんに?お前ら同期だもんな」

 「俺は別に。大事な仕事仲間っすよ」


いつか聞いた、男性社員達の会話を千秋は思い出した。
それを聞いて千秋は焦った。
千秋を慕い、一生懸命仕事に打ち込む美紅に惹かれていたから。
誰にも渡したくなかった。自分だけの美紅にしたかった。
そして、恋人になって結婚して。
幸せな毎日に不満なんて一切なかったのに、なぜ美紅を裏切ってしまったのか。
だが美紅を裏切った理由を、千秋は自分でもよく分かっていた。
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