優しいあなたは罪な人

繋がる体と募る不安

6

美奈子は土日裕介と穏やかな時間を過ごした。
金曜日に情熱的だった裕介は、男としての自信を取り戻したせいか、今まで美奈子との間にあったギクシャクした関係がなくなってホッとした。
日曜日の夜、裕介は美奈子の料理に舌鼓を打ちながらワインを堪能した。

「美奈子。長い間寂しい思いをさせて本当にごめんね」

裕介は改まって美奈子に頭を下げる。

「こんなにも僕は余裕のない人間だって初めて知ったよ。仕事のことで頭がいっぱいになって、美奈子に甘えてた」

「ううん！私ももっと考えれば良かったの！毎日家の中にいて、裕介のためにちゃんと家事もやろうって思ってたのに、どこかで私、見返りを求めてた。こんなに頑張って家のことしてるんだから、家に帰ったら仕事より私を大事にしてって裕介に求めてた。居心地の悪い家庭にしてしまって本当にごめんなさい」

何度謝ってももう遅いのは分かっている。
だからこそ、もう千秋とのことは忘れて、裕介を大切にしないとダメだと反省している。

「僕は、その、美奈子も分かってると思うけど、多分その……………」

恥ずかしくて裕介は最後までは言いにくい。
他人と比べた事はないが、おそらく性欲が希薄なのは裕介自身よく分かっている。
特にアルコールを飲むと、性欲は一気に減退する。

「でも、美奈子をもう悲しませないから！毎日の晩酌も減らしたって良い。だから、いつまでも僕と一緒にいてほしい。美奈子との子供も、早く欲しいって本気で思ってる」

美奈子は目の前の優しい裕介に微笑んだ。
本当に愛されていると分かった。

「うん。子供、欲しいね。裕介に似た男の子が欲しいな。頭が良くて、優しくて、カッコよくて、裕介そっくりな男の子が欲しい」

照れながら裕介も微笑む。

「僕は、美奈子に似た女の子が欲しいな。可愛くて、優しくて、料理上手になる女の子」

2人は顔を見合わせて笑う。

「あ！やっぱりダメだ！女の子はダメ！美奈子に似た娘を嫁にやるなんて無理だ！男の子！僕に似た男の子にしよう！美奈子に似た男の子でも良いけど、女の子は絶対ダメ！」

慌てて必死になる裕介が可愛くて、美奈子は笑いが止まらない。
まだいつ授かるかも分からないのに、もう裕介の頭の中では子供のいる未来を考えていた。

「美奈子。結婚してくれてありがとうね。これからも支えて欲しい。僕はこの先、絶対美奈子を幸せにするから」

まるで二度目のプロポーズのようだった。
そんな言葉を貰える資格は本当はないと思いながら、裕介を傷つけないために、何があっても千秋の事は隠し通すと美奈子は決めた。