長い夜、蒼い月

新たな男

７９

一夜はマイケルが日本に来るのは歓迎ではなかった。
マイケルはなにかと一夜とジェイクの関係を勘ぐっていた。
マイケルに嫌われているのは分かる。一夜はアメリカ本社のお気に入りでもあるからだ。


　あー、絶対面倒なことが起きるに決まっている。
　とにかくあの単細胞で能天気のジェイクと優姫をなんとかしないと。
　バレたらこっちにも被害が来るに決まっている。


明後日のことを考えると不安しかない。
その時LINが入った。
由紀子からだった。

【社長から聞きました。アメリカ本社の役員のマイケル氏が来日するって。しばらく大変でしょうけど頑張ってね】

こう言う気遣いが一夜の心に染みる。しかもグッドタイミングで。

【声が聞きたい。ダメ？】

すぐに一夜は返事を返す。
既読になるがなかなか返事が来ない。ダメかと一夜は諦めるとLINが来た。

【明日の仕事の後に電話しましょう。私も一夜の声が聞きたい】

由紀子の返事が一夜には切なすぎる。
会うことも出来ず、声を聞くことも制約がある。
本当なら今すぐあって思い切り抱いて一夜は由紀子を感じたかった。
愛してると言えないもどかしさ。言ってはいけない言葉。
もし、由紀子が独身だったら。
ifはないと分かっていても、どうしても求めようとする。
由紀子が先にそれに気がついたから、由紀子は距離を置く決心をしたのだ。
もう二度と、この腕の中に由紀子を抱くことはできないように一夜は思った。