長い夜、蒼い月

新たな男

７８

仕事が終わり、ジェイクは優姫を再び夕飯に誘った。
なるべく英語の分かるスタッフのいない店を選んだ。
優姫はまた、ジェイクとご飯を一緒に食べられると無邪気に喜んでいる。
初めて付き合った男が素敵すぎて優姫は夢心地なのだ。

「実は、大事な話があるんだ」

真剣なジェイクの顔に優姫は不安になった。
もしかして、もう別れ話かと思い優姫も真剣な顔になる。　
　　
「実は、明後日の木曜日、アメリカ本社の役員が日本に視察に来る」

別れ話ではなさそうで優姫は少し安心した。

「その役員はマイケルと言って、前に、その……」

ジェイクの歯切れが悪い。優姫は気になる。

「その、マイケルは、俺と、付き合ってたと言うか、その、えーと」

優姫はびっくりした。付き合っていたと言う言葉に即座に反応した。

「ジェイクってバイ？」

ズバリ言われ、ジェイクは俯いた。

「やっぱりジェイクが攻め？」


　そっちの話かよ！


とジェイクは俯きながら思った。
優姫の顔を見るのが怖かった。
軽蔑されたらと思うと、本気で心臓が縮こまる思いだった。

「やぁーん！リアルぅ」

優姫の声のテンションがおかしい。
恐る恐るジェイクは優姫を見ると、優姫は目を輝かせてうっとりジェイクを見てる。

「あ、ごめんごめん。ちょっと興奮しちゃった」

優姫が照れ笑いをする。

「だってさ、彼氏がアメリカ人でバイってなんかすごくカッコいーって思っちゃって」

優姫の態度に拍子抜けのジェイク。


　なんか違うだろ。
　普通、彼氏がバイって引かないのか？
　って、彼氏言われて嬉しいけどさっ。


彼氏と言われたのがとにかく嬉しかった。
そしてあまりにも優姫らしい反応とジェイクは笑った。
優姫はもっと聞きたいと言う顔をしてる。

「マイケルとのことは教えないからなっ！」

流石にそれは釘を刺した。優姫はちぇーと言う顔をする。

「とにかく、奴は言わば権力者だ。俺に万が一未練があったら、俺と付き合っているお前にも何をするかわからない。だから俺たちのことはバレないようにするからな！」

自分を心配して必死になってるジェイクが可愛かった。そして大事にされているのが本当に嬉しかった。

「大丈夫！みんなにもバレてないし、これからもバラすつもりないし、マイケルにもバレないようにする！」

優姫の言い方が可愛すぎてジェイクはデレた。

「明後日からしばらくデートできないから、今夜またマンションに来ないか？」

ジェイクが誘うと優姫は顔を振る。

「行きたいけど着替えない。流石に明日も同じじゃ」

優姫が言うとジェイクは時計を見た。

「まだ開いてるショップある！買いに行くぞ」

食事もそこそこに店を出ると、優姫を引っ張るようにショップに入った。
スーツを買うと下着も一式買う。

「なんとか間に合ったな。とりあえず今日の下着洗っとけ。あと今度スーツも俺の家に何着か置いておけ」

ジェイクは部屋に入ると優姫に言った。

「え？」

ジェイクの言葉に優姫は照れる。

「泊まる度に着替えないんじゃ面倒だろ」

ジェイクも照れる。

「彼女なんだから、いつでも泊まれるようにしとけ」

ジェイクは、眼鏡を頭に引っ掛けてから屈むと優姫にキスをする。優姫も背伸びをしてそのキスを受け止める。
止まらぬキスに二人は幸せに包まれた。