上 下
81 / 81
終焉

1

しおりを挟む
こうして、私の39年の短い生涯は幕を閉じました。
摂子との20年に及ぶ、鷹雄を巡る愛憎とも解き放たれたのです。

私は摂子のように鷹雄の子供を産む事は叶いませんでしたが、いみじくも鷹雄が言った、結局お前のことは捨てられんかったぐらいにはな。と言う言葉が、唯一、私が最期まで鷹雄に愛された証の様に思います。

ただそれは、惚れた腫れたの男女の愛ではなく、夫婦としての情けだったのでしょうけど。

1番口惜しかったのは、あれ程愛人を囲っていたのに、摂子と関係を持ってから摂子が姿を消すまでは、愛人達を全て切っていたことを知った時です。
本当に心の底から愛した女は、ただ一人だったのだと認めざるおえません。

でも、それで良いんです。
鷹雄を愛するのは、生やさしいものではありませんでしたから。
そんな鷹雄を生涯愛し貫くことが出来たのは、癪だけどきっとせっちゃんのおかげでしょうね。

叶わなかった事はもう一つ。
最後まで、私と摂子はお互いに歩み寄る事は無かったですが、もし私がもう少し長生きできていたなら、いつかはこの人生も笑い話になったのでしょうか。

だって、同じ男を愛した私と摂子は、結局、同じ穴の狢。だったのですからね。




しおりを挟む

この作品の感想を投稿する


処理中です...