貉達の燔祭 （鳴かない杜鵑 spin off３）

シチ

4

鷹雄が組長になって、摂子は喫茶店を辞めた。
昼間は正二の世話をしながら、鷹雄が買ったマンションで生活を始めた。
もう美都子を気にする事なく、鷹雄は堂々と摂子を愛人として囲っていた。
勿論摂子に危険が及ばない様に、鷹雄は子分を摂子のボディガードに付けている。

「真一がしょっちゅう、この家に出入りしとるんだと聞いた」

ヤスから聞いて、鷹雄は面白くなさそうな顔をする。

「大学のお友達を連れて来たりしてるのよ。しんちゃん、離れよりこっちの方が居心地がいいって言ってたわ」

「まーったく。いくつになっても摂子に甘えくさって」

鷹雄と真一の親子関係は、正直良いものではなかった。
幼い頃から父親らしい事は何もしてこなかったので、真一に距離を持たれても鷹雄もそれは諦めている。
ただ摂子が今までずっと真一を可愛がり、正二の家に出た後も真一と繋がりを持っていたおかげで、真一はまだ鷹雄を父だと認めてはいた。

「そんなに摂子が好きなら、あいつを摂子の息子にさせてやるか」

サラッと鷹雄が言ったことに、摂子はびっくりして鷹雄を見る。

「え？」

驚く摂子の顔を見て鷹雄は微笑む。

「ちゃんと決まってから言おうと思っていた」

鷹雄が改まった顔で摂子を見る。

「絶対美都子とは別れる。何があってもな。だからちゃんと離婚したら、俺と結婚してくれ。俺にはお前が必要だ」

突然のプロポーズに摂子は現実味がなかった。

「おいおい、リアクションが全くないがちゃんと聞いてたか？」

呆れるように笑って鷹雄は言う。

「だって……突然なんだもの」

摂子は何て返事をして良いかわからなかった。

「冗談だと思ったか？」

素直に摂子は頷き、そして鷹雄に抱き着いた。

「もう少し、待っててくれるか？何があってもお前をこの先ずっと守ってやる」

「……はい」

摂子は嬉しくて泣きそうになった。
確かに時間は掛かるだろうが、それでも鷹雄を自分だけの物にしたいと摂子も独占欲が湧いていた。
昼も夜も、鷹雄を自分だけの鷹雄にしたかった。