貉達の燔祭 （鳴かない杜鵑 spin off３）

ロク

6

その後ヤスから鷹雄の部屋の番号を聞き、摂子はその部屋に向かった。
本当は、ヤスが言ったような事だと、摂子も十分承知して部屋までやって来た。ヤスに言ったことも嘘ではない。
過去を思えば、鷹雄と一つになる事が出来るのか不安ではあった。
もし戸灘との事がフラッシュバックしたら、どうなるのかと摂子は怖くもある。
それでも鷹雄を失いたくない一心で、ドキドキしながら部屋のドアをノックした。

「摂子」

ドアが開くと、摂子の目の前に笑顔の鷹雄が立っていた。

「鷹雄さん」

摂子の笑顔に鷹雄はもう我慢ができなかった。
摂子の腕を引くと部屋の中に入れ、そのままぎゅっと抱きしめた。

「二度と会えんかと思った。摂子に触れることもできないと」

「鷹雄さん。生きていてくれて本当に良かった。病室で目を覚ましてくれて、本当に良かった」

摂子が鷹雄の背中に手を回しギュッと抱きつく。

「……ずっと会いたかったよ。今日がすごく楽しみだった。鷹雄さんに会いたかった」

摂子の香りに包まれて、鷹雄は摂子を離せなかった。
まるで初恋の様に恥ずかしくて、摂子の顔がまともに見れなかった。

「俺な、お前と病室で会ってからずっと思ってた。俺は、お前のこと、愛してるってな」

鷹雄の腕の中で聞く告白に摂子はドキドキする。

「きっと、ずっとお前のことを愛してた。認めるんが怖かった。いや、違うな。認めて無理矢理俺のモンにして、お前に嫌われるんが怖かった」

摂子は鷹雄に抱きつきながら、体が燃える様に熱くなった。

「怖いか？俺が怖いか？」

摂子は鷹雄の胸に顔を擦り付ける。

「怖くないッ。私も、鷹雄さんが好き。愛してる。たとえ美都子さんに恨まれても、私」

鷹雄が摂子の顔を上げ、言葉を遮るようにキスをした。

「……美都子の事は言うな」

「うん。好き……鷹雄さん」

鷹雄は摂子を抱き上げると、そのままベッドへと向かった。
これが修羅の始まりだとしても、摂子も後悔はなかった。