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シ
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学校が終わり摂子の部屋で真一と一彦も遊ぶ。
「チョコレート、お父さんがいっつも買って来てくれるんだよ!」
嬉しそうに真一は言い、摂子に割ってもらったチョコレートを口に入れると、美味しくて頬を緩める。
「はい、かず君」
摂子が自分の分を割って大きい方を一彦に渡す。
「俺は少しで良い。これも摂子が食べな」
渡されたチョコレートを、一欠片だけ割って一彦は摂子に返した。
「じゃあ、俺が食べる!」
真一が手を出そうとすると、摂子はその手を優しく握った。
「しんちゃん、食べすぎると虫歯になるんよ。これは明日、しんちゃんが食べな」
摂子はそう言って、一彦が返してくれたチョコレートを紙に包んだ。
「せっちゃんは優しいな。ちゃんとお姉ちゃんしてるな」
ふたりのやりとりを優しい目で一彦は見ている。
「ふふふ。だってしんちゃんのこと大事で大好きなんだもん」
摂子が真一の頭を撫でながら優しい眼差しで見つめる。
その姿に一彦はドキドキする。摂子が愛らしくて仕方ないのだ。
しばらくすると、鷹雄の子分が真一をお昼寝させると連れて行き、摂子と一彦は静かになった部屋で各々勉強を進める。
向かい合って勉強をしながら、一彦は時折摂子を盗み見した。
肩まで長い栗色の髪をおさげに結い、真剣に教科書を見詰める摂子の長い睫毛に見惚れる。
スッとした鼻筋の下の、ぷっくりとした柔らかな桃色の唇に目が移ると、一彦の胸の鼓動は早くなる。
「…………静かだね」
「うん。今日は美都子さんも出掛けとるから。鷹雄さんの所に行くって言ってた」
母屋に誰も居ないのかと思うと、一彦の胸は更にドキドキとする。
「あのさ、せっちゃんは、好きな人おらんの?」
一彦の言葉に、摂子は顔を上げると笑顔で首を振る。
「私なんかが好きな人作ったらダメなんだよ。どうせ好きになってもらえないんだもん。好きになったって辛いだけだもん」
悲しそうに摂子は言う。
「そんな事ない!ダメなんてないよ!俺はせっちゃんが好きだよ!せっちゃんにも好きになってもらいたいよ!」
一彦の告白に摂子はびっくりしながらも直ぐに冷静になった。
「かず君に私なんてもったいないよ。小さい頃からそばにいるから勘違いしてるんだよ。かず君にはちゃんとした女の子がお似合い」
ダン!と言う音が響いた。
摂子が最後まで言う前に、一彦が険しい顔で摂子を見てテーブルを叩いた。
「私なんかとか私なんてって言うなよ!俺はずっと摂子が好きだった!摂子と結婚したい。摂子とずっと一緒にいたい!」
一彦はそう言うと摂子に近づき摂子を抱きしめる。
「か、かず、君!」
ギュッと抱きしめられて摂子は動けない。
「摂子、好きだ!」
一彦はそのまま摂子を押し倒すと両手を押さえて動きを封鎖する。
「好きだ!」
摂子の胸に一彦は顔をうずめる。
摂子は戸灘が浮かんでゾッとして、声を上げる事も出来ずそのまま硬直してしまった。
「チョコレート、お父さんがいっつも買って来てくれるんだよ!」
嬉しそうに真一は言い、摂子に割ってもらったチョコレートを口に入れると、美味しくて頬を緩める。
「はい、かず君」
摂子が自分の分を割って大きい方を一彦に渡す。
「俺は少しで良い。これも摂子が食べな」
渡されたチョコレートを、一欠片だけ割って一彦は摂子に返した。
「じゃあ、俺が食べる!」
真一が手を出そうとすると、摂子はその手を優しく握った。
「しんちゃん、食べすぎると虫歯になるんよ。これは明日、しんちゃんが食べな」
摂子はそう言って、一彦が返してくれたチョコレートを紙に包んだ。
「せっちゃんは優しいな。ちゃんとお姉ちゃんしてるな」
ふたりのやりとりを優しい目で一彦は見ている。
「ふふふ。だってしんちゃんのこと大事で大好きなんだもん」
摂子が真一の頭を撫でながら優しい眼差しで見つめる。
その姿に一彦はドキドキする。摂子が愛らしくて仕方ないのだ。
しばらくすると、鷹雄の子分が真一をお昼寝させると連れて行き、摂子と一彦は静かになった部屋で各々勉強を進める。
向かい合って勉強をしながら、一彦は時折摂子を盗み見した。
肩まで長い栗色の髪をおさげに結い、真剣に教科書を見詰める摂子の長い睫毛に見惚れる。
スッとした鼻筋の下の、ぷっくりとした柔らかな桃色の唇に目が移ると、一彦の胸の鼓動は早くなる。
「…………静かだね」
「うん。今日は美都子さんも出掛けとるから。鷹雄さんの所に行くって言ってた」
母屋に誰も居ないのかと思うと、一彦の胸は更にドキドキとする。
「あのさ、せっちゃんは、好きな人おらんの?」
一彦の言葉に、摂子は顔を上げると笑顔で首を振る。
「私なんかが好きな人作ったらダメなんだよ。どうせ好きになってもらえないんだもん。好きになったって辛いだけだもん」
悲しそうに摂子は言う。
「そんな事ない!ダメなんてないよ!俺はせっちゃんが好きだよ!せっちゃんにも好きになってもらいたいよ!」
一彦の告白に摂子はびっくりしながらも直ぐに冷静になった。
「かず君に私なんてもったいないよ。小さい頃からそばにいるから勘違いしてるんだよ。かず君にはちゃんとした女の子がお似合い」
ダン!と言う音が響いた。
摂子が最後まで言う前に、一彦が険しい顔で摂子を見てテーブルを叩いた。
「私なんかとか私なんてって言うなよ!俺はずっと摂子が好きだった!摂子と結婚したい。摂子とずっと一緒にいたい!」
一彦はそう言うと摂子に近づき摂子を抱きしめる。
「か、かず、君!」
ギュッと抱きしめられて摂子は動けない。
「摂子、好きだ!」
一彦はそのまま摂子を押し倒すと両手を押さえて動きを封鎖する。
「好きだ!」
摂子の胸に一彦は顔をうずめる。
摂子は戸灘が浮かんでゾッとして、声を上げる事も出来ずそのまま硬直してしまった。
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