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サン
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次の日の朝食の後、鷹雄は戸灘に部屋に呼び出された。
「美都子さんと結婚?それはどう言う事ですかね。俺には真一もおるし、所帯を持つつもりも全くないんですよ」
寝耳に水のことに鷹雄は不機嫌になる。
「分かっとる、分かっとる。お前が一人の女で満足できねぇって事もよ。でも儂は美都子に弱くてなぁ。子供ん頃から人付き合いもうまく出来なくて、わがままに育ててきちまった。美都子がお前が欲しいと言えば、儂はそれをダメだとは言えん。儂はお前のこと本当の息子だと思うほど可愛がっとるしな」
戸灘は和かに話をするが目は笑っていなかった。
「しかし、俺は美都子さんを」
鷹雄は美都子を愛してなどいない。この話を素直に受けるつもりもなかった。
「すこーし愛してくれりゃそれで良え。儂だってそんな事は重々承知しとる。だが美都子を支えていけるのは、お前しか居らんと儂も分かっとる。戸灘の家は正二がおるから、お前は美都子だけ大事にして政龍組を継いでってくれたら良え」
今はヤクザの家を嫌って寄り付きもしていないが、正二がこの戸灘の家をいずれは継ぐ。
鷹雄とて戸灘の家を継ぐ気はサラサラなかった。
「本当に美都子さんには甘いんですね」
少しだけ呆れながら鷹雄が言うと戸灘は笑う。
「お前と結婚すれば、美都子が産む子供は政龍組の跡継ぎだ。儂は直系が欲しいんだよ。美都子の子は政龍組の後継者として儂が養子にもらう。儂は戸灘の家の価値より、政龍組の方が上。歴代のオヤジ達ができなかったことをしてぇんだ」
確かに、歴代の組長の直系は誰も政龍組を継いではいない。
二代目杉田組長と親戚関係にあると言っても、戸灘は杉田の直系ではない。
「俺が真一を継がせるとは考えないんですか?」
「そうなりゃ戦争だなぁ。儂と袂を分かつ覚悟が有るならな」
今の絶対勢力は戸灘。戸灘の次は若頭で腹心の三木が継ぐのが決まっている。
鷹雄と美都子に子供が産まれれば、その子供の後見人は三木になる。
そもそも、鷹雄は自分が頂点を取るつもりはあるが、真一に跡を継がす気持ちは一切ない。世襲制度に拘る気持ちが正直理解できなかった。
「………………分かりました。俺は杉田組長に拾われた時から、政龍組に命預けてます。組長のために、美都子さんと結婚させていただきます」
鷹雄がそう言うと戸灘は大声で笑う。
「さすがやな。オヤジ達がお前を気にいったのも分かるってもんだ。そうとなればさっさと話、進めんとな」
もう鷹雄にも異論はない。
とびきりの美女とは言えないが、美都子の容姿に鷹雄は文句がない。女として十分に魅力もある。
ただ病弱な美都子が、戸灘が望むように子を産めるとは思えなかった。
「さぁて、美都子と婚約するなら、お前も箔をつけにゃならねぇな。いずれ政龍組を背負うんだ。政龍組の直参としてお前も組を持つのも良いだろう」
鷹雄はフッと笑って頭を下げた。
「ありがたき幸せ」
鷹雄はそう言って顔を上げた。
戸灘はうーむと考え込むが、閃いたのか鷹雄の顔を見る。
「ああ、政龍の字を少し変えて同じ読みにして誠竜会ってのはどうだ?」
こうして鷹雄は初代誠竜会の会長になったのだった。
「美都子さんと結婚?それはどう言う事ですかね。俺には真一もおるし、所帯を持つつもりも全くないんですよ」
寝耳に水のことに鷹雄は不機嫌になる。
「分かっとる、分かっとる。お前が一人の女で満足できねぇって事もよ。でも儂は美都子に弱くてなぁ。子供ん頃から人付き合いもうまく出来なくて、わがままに育ててきちまった。美都子がお前が欲しいと言えば、儂はそれをダメだとは言えん。儂はお前のこと本当の息子だと思うほど可愛がっとるしな」
戸灘は和かに話をするが目は笑っていなかった。
「しかし、俺は美都子さんを」
鷹雄は美都子を愛してなどいない。この話を素直に受けるつもりもなかった。
「すこーし愛してくれりゃそれで良え。儂だってそんな事は重々承知しとる。だが美都子を支えていけるのは、お前しか居らんと儂も分かっとる。戸灘の家は正二がおるから、お前は美都子だけ大事にして政龍組を継いでってくれたら良え」
今はヤクザの家を嫌って寄り付きもしていないが、正二がこの戸灘の家をいずれは継ぐ。
鷹雄とて戸灘の家を継ぐ気はサラサラなかった。
「本当に美都子さんには甘いんですね」
少しだけ呆れながら鷹雄が言うと戸灘は笑う。
「お前と結婚すれば、美都子が産む子供は政龍組の跡継ぎだ。儂は直系が欲しいんだよ。美都子の子は政龍組の後継者として儂が養子にもらう。儂は戸灘の家の価値より、政龍組の方が上。歴代のオヤジ達ができなかったことをしてぇんだ」
確かに、歴代の組長の直系は誰も政龍組を継いではいない。
二代目杉田組長と親戚関係にあると言っても、戸灘は杉田の直系ではない。
「俺が真一を継がせるとは考えないんですか?」
「そうなりゃ戦争だなぁ。儂と袂を分かつ覚悟が有るならな」
今の絶対勢力は戸灘。戸灘の次は若頭で腹心の三木が継ぐのが決まっている。
鷹雄と美都子に子供が産まれれば、その子供の後見人は三木になる。
そもそも、鷹雄は自分が頂点を取るつもりはあるが、真一に跡を継がす気持ちは一切ない。世襲制度に拘る気持ちが正直理解できなかった。
「………………分かりました。俺は杉田組長に拾われた時から、政龍組に命預けてます。組長のために、美都子さんと結婚させていただきます」
鷹雄がそう言うと戸灘は大声で笑う。
「さすがやな。オヤジ達がお前を気にいったのも分かるってもんだ。そうとなればさっさと話、進めんとな」
もう鷹雄にも異論はない。
とびきりの美女とは言えないが、美都子の容姿に鷹雄は文句がない。女として十分に魅力もある。
ただ病弱な美都子が、戸灘が望むように子を産めるとは思えなかった。
「さぁて、美都子と婚約するなら、お前も箔をつけにゃならねぇな。いずれ政龍組を背負うんだ。政龍組の直参としてお前も組を持つのも良いだろう」
鷹雄はフッと笑って頭を下げた。
「ありがたき幸せ」
鷹雄はそう言って顔を上げた。
戸灘はうーむと考え込むが、閃いたのか鷹雄の顔を見る。
「ああ、政龍の字を少し変えて同じ読みにして誠竜会ってのはどうだ?」
こうして鷹雄は初代誠竜会の会長になったのだった。
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