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端緒

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母は、私を産んで病気で亡くなりました。
私が病弱なのは、母譲りなのでしょう。

長男の兄は戦死。
長女の姉は嫁ぎ先で戦死。

次男の兄は疎開先から戻りました。
とても大人しく、学問の好きな人なので任侠の家を嫌い、後に大学生になり家を出て一人暮らしを始めました。

兄が父を避けるように、父を嫌う口さがない人たちから、父は良く悪口を叩かれていました。
父には何人もの愛人がいて、外に子供が何人もいると聞いていましたが、それもこの世界では珍しいことではなかったので、私はそんなこともどうでも良いほど父が好きでした。
父が末っ子で病弱な私を、溺愛してくれていたせいかもしれません。

豪気で気風が良く、人情もある父。
組長となってからは凄味が更に増し、私も将来夫を持つなら父のような人がいいと思っておりました。

そしてある日、そんな父のような男、飯塚鷹雄がこの家にやって来たのでした。
初めて出会った日に、私は鷹雄に一目惚れをしたのです。

一筋縄ではいかない、一癖も二癖もあるこの男。
愛してしまったら、きっと身も心もズタズタになるのが分かっていても、絶対にこの男と結婚するんだと心に決めたのです。
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