トライアングル

五嶋樒榴

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しほな・別れ

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今夜は久し振りに久利と会うと思うと、朝からソワソワしている自分がいた。

珍しく朝食をきちんと作り、洗濯を干した後、キッチン、トイレ、バスルームを丹念に磨き上げた。
そうやって体を動かして、時間が経つのを少しでも早めたい気分だった。

昼食は取らずにコーヒーを飲んでいるとインターホンが鳴った。
日曜のこの昼間に来る来客は恋人の雅人ぐらいだった。

「はい」

インターホンのカメラに映るのは、やっぱり雅人。
私は玄関のドアを開けた。

「いらっしゃい」

私が声をかけても、雅人は無言のまま部屋に入ってきた。

「荷物。どうせ取りに来るなら、早い方がいいと思って」

先週別れ話を切り出され、久利に相談するまではと、私は雅人に返事を保留していたのに、雅人は痺れを切らしたようだった。

「お互い気持ちないの分かってるのに、こんな関係も、しほなに悪いからさ」

なんか私の気持ち、この人勝手に代弁してるんですけど。

「気持ちないのは雅人だけでしょ。私は、一度だって別れたいって言ったことないよ。雅人が何度浮気してもね」

喧嘩口調になってると気づき、私は口を噤んだ。雅人は持ってきたバッグに黙々と荷物を詰める。
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