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夏休みを満喫してます。
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8月になると巷はお盆休みの話で盛り上がる。
美峰の営業所は12日から19月までを夏季休業にしていたので、正直お盆前のこの時期は仕事はそんなに忙しくなかった。
「今年のお盆は実家でまた過ごすのか?」
所長の久世が美峰に尋ねる。
「いえ。今年は、旅行に行くので」
照れながら美峰は言う。
「へー。最近、なんか変わったよな。ゴールデンウィークも旅行行ってたし。さては、マジで彼女が出来たか?」
イヒヒと久世は笑う。
「えー!柊木さんに恋人?やっぱり?」
「やっぱりねー」
みんなが口々にやっぱりと言うので、美峰は恥ずかしくなる。
「…………あ、その、まぁ」
真っ赤になって美峰が言うと久世はガッカリする。
「あー!これでお一人様は俺だけじゃん!なんだよー。チックショー」
楽しそうに久世は言う。
「所長は実家に戻られるんですか?」
「はぁ?帰らねーよ。帰ったって結婚しろってうるせーだけだし。こっちでダラダラ過ごすだけだ」
そう言いながらも、楽しそうな顔だなと美峰は思った。
プライベートをあまり語らないが、前に見合い写真を見せられた時から、久世は相手がいるように美峰は思っている。
それは、秘密にしなければいけない相手なのではと勘繰ってしまった。
「まぁ、お互い仕事のことは忘れて、お盆ぐらい楽しもうや」
久世がニヤニヤしながら美峰に言う。
「そうですね」
そう笑顔で返したが、きっとお盆明けに飲みに誘われて、根掘り葉掘り聞かれるだろうと美峰は苦笑した。
優星は美峰より早目のお盆休みを取っていた。
お盆だからと言って銀行を閉めるわけにはいかないので交代で休むのだが、優星は旅行の12日から14日をもう先に考えていたので、8日から16日をお盆休みにしていた。
美峰と12日から19日まで一緒に過ごせると思うと、後半の休みが合わなかったのは仕方ないと今回は諦めた。
とは言っても、優星は夏休みに少しでも多く明星と過ごせるために、夏は有給も使って長期の休みを毎年取る。
他の行員たちからは『よっぽどシロなんだな』と揶揄われる。
行員の長期休暇は、不正をあぶり出す調査期間とも言われているからだ。
「葉山、ちょっと」
支店長から声をかけられて優星は支店長の前に立つ。
「はい。なんでしょうか?」
美峰の会社の新規融資かなと思った。
「昼にちょっといいか?ここで話すような話ではないんで」
支店長の言葉に優星は顔を硬らせる。
何か失敗があったかと脳内を駆け巡らせる。
「仕事の話じゃないから安心しろ。詳しくは後で」
仕事以外の話ということは、またかと優星は思った。
優星を気に入ったクライアントが、是非うちの娘の婿にとよく言われるのだった。
「…………いつもの事でしたらすみません。実は、大切な人がいるので」
優星が小声で言うと、支店長は優星をジッと見つめた。
「ああ、そうか!あ、それなら良いんだ」
ホッとして支店長は言う。実は支店長も優星にそう言う話を勧めるのが苦痛だった。
優星に恋人がいると分かれば、きっと周りに色々聞かれると思い黙っていたが、優星は美峰の存在は秘密のまま、恋人がいることはもうバレても良いと思った。
支店長に言っただけでもスッキリした。
美峰の営業所は12日から19月までを夏季休業にしていたので、正直お盆前のこの時期は仕事はそんなに忙しくなかった。
「今年のお盆は実家でまた過ごすのか?」
所長の久世が美峰に尋ねる。
「いえ。今年は、旅行に行くので」
照れながら美峰は言う。
「へー。最近、なんか変わったよな。ゴールデンウィークも旅行行ってたし。さては、マジで彼女が出来たか?」
イヒヒと久世は笑う。
「えー!柊木さんに恋人?やっぱり?」
「やっぱりねー」
みんなが口々にやっぱりと言うので、美峰は恥ずかしくなる。
「…………あ、その、まぁ」
真っ赤になって美峰が言うと久世はガッカリする。
「あー!これでお一人様は俺だけじゃん!なんだよー。チックショー」
楽しそうに久世は言う。
「所長は実家に戻られるんですか?」
「はぁ?帰らねーよ。帰ったって結婚しろってうるせーだけだし。こっちでダラダラ過ごすだけだ」
そう言いながらも、楽しそうな顔だなと美峰は思った。
プライベートをあまり語らないが、前に見合い写真を見せられた時から、久世は相手がいるように美峰は思っている。
それは、秘密にしなければいけない相手なのではと勘繰ってしまった。
「まぁ、お互い仕事のことは忘れて、お盆ぐらい楽しもうや」
久世がニヤニヤしながら美峰に言う。
「そうですね」
そう笑顔で返したが、きっとお盆明けに飲みに誘われて、根掘り葉掘り聞かれるだろうと美峰は苦笑した。
優星は美峰より早目のお盆休みを取っていた。
お盆だからと言って銀行を閉めるわけにはいかないので交代で休むのだが、優星は旅行の12日から14日をもう先に考えていたので、8日から16日をお盆休みにしていた。
美峰と12日から19日まで一緒に過ごせると思うと、後半の休みが合わなかったのは仕方ないと今回は諦めた。
とは言っても、優星は夏休みに少しでも多く明星と過ごせるために、夏は有給も使って長期の休みを毎年取る。
他の行員たちからは『よっぽどシロなんだな』と揶揄われる。
行員の長期休暇は、不正をあぶり出す調査期間とも言われているからだ。
「葉山、ちょっと」
支店長から声をかけられて優星は支店長の前に立つ。
「はい。なんでしょうか?」
美峰の会社の新規融資かなと思った。
「昼にちょっといいか?ここで話すような話ではないんで」
支店長の言葉に優星は顔を硬らせる。
何か失敗があったかと脳内を駆け巡らせる。
「仕事の話じゃないから安心しろ。詳しくは後で」
仕事以外の話ということは、またかと優星は思った。
優星を気に入ったクライアントが、是非うちの娘の婿にとよく言われるのだった。
「…………いつもの事でしたらすみません。実は、大切な人がいるので」
優星が小声で言うと、支店長は優星をジッと見つめた。
「ああ、そうか!あ、それなら良いんだ」
ホッとして支店長は言う。実は支店長も優星にそう言う話を勧めるのが苦痛だった。
優星に恋人がいると分かれば、きっと周りに色々聞かれると思い黙っていたが、優星は美峰の存在は秘密のまま、恋人がいることはもうバレても良いと思った。
支店長に言っただけでもスッキリした。
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