僕と貴方と君と

五嶋樒榴

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ソファに並んでビールで乾杯する。
優星は美峰を見つめながらビールに口を付けるが、美峰はその視線が痛いくらい恥ずかしい。

「…………俺ね、美峰さんに好きって言って、こうして付き合うことになって、でも、すげー頭の中で、色んなこと考えちゃって」

優星の言葉に、美峰はドキンとする。

「美峰さんは、俺を待つって言ってくれてるけど、実際はどうなのかなって、正直気になってます」

こんな事を話すと言う事は、やはり今夜、と美峰はドキドキが止まらなくなってきた。

「僕は、優星君が、気持ちの整理つくまで、別に、その、本当に、その、急いでないって言うか、その」

しどろもどろで美峰が言うと、優星はフッと優しい顔で笑う。

「うん。ありがとう」

優星は缶ビールをテーブルに置いて、美峰を包むように抱き締めた。
ギュッと抱き締められて、美峰はドキドキしながら震える。

「…………好き。美峰さんが、ドンドン好きになってる。好きだから、馬鹿みたいな事考える。美峰さん前に今まで恋人いなかったって言ってたけど、それは女性のこと?男性は?」

優星の質問に、美峰は昔の事を思い出して気持ちがズキズキする。

「それは、そのッ」

正直に言いづらい。
相手が、セックスをすることに怖気付いて別れたとは言えない。

「ごめんなさい。変なこと聞いてるって分かってる。でも、正直気になる。男の人好きになったの初めてだし、俺、美峰さんにわがまま言ってる気がして」

優星が悩む気持ちも分からなくはなかった。
自分は恋愛対象が男で。ずっと良いなと思っていた一目惚れの相手の優星と両思いになったと喜んでいるが、優星がこの先を怖がって進めない気持ちも経験済みなので分かってはいる。

「あのね。その、恋人と呼んで良いか分からないけど、今までに1人だけ、大学時代に好きになった人とデートはしたよ。もちろん僕の事も好きだって言ってくれたから、両思いにはなったけど。でも、キスはしたけど、それ以上には進む前に別れたから、結局恋人と言えるのか、プラトニックって言うか」

美峰の告白に、優星はホッとした。
美峰がまだ、男の経験がなかったことが嬉しかった。

「そうだったんだ。ごめんなさい。言いにくいこと言わせて」

優星は美峰の頬を両手で包んでおでこをくっつけ合わせる。

「ちょっと、嫉妬」

そう言って、優星は美峰にキスをする。
優しく触れ合う唇。
優星が少し唇を開くと、美峰の唇を吸うようにキスをする。
美峰も唇を開くと、優星の舌を招き入れる。
美峰の舌を吸うように絡ませると、美峰も応えるように優星の舌に絡ませる。

「……気持ち、良い。もっと、欲しい」

優星はそう言い、美峰から缶ビールを取り上げてソファに押し倒した。
美峰に体重を掛けないように覆いかぶさりながら美峰の唇を貪る。
美峰も気持ち良くてされるがままだった。
唇が離れると、優星は美峰を見下ろしながら微笑んだ。

「……美峰さんのファーストキス、俺が欲しかったな。全部、美峰さんの初めて、欲しかった」

優星の言葉に美峰は真っ赤になる。
やっぱりこのまま優星に抱かれるのかと、美峰はドキドキして期待してしまう。

「……優星君、僕、さっきね」

紙袋の中身を見てしまった事を言いかけた時だった、優星がゆっくり美峰を起こした。

「さっき?」

優星が優しく聞き返す。美峰はいざとなると、この雰囲気を壊したくなくて言い出せない。
恥ずかしいのもあった。

「あ、そのッ!…………昔の話、僕も聞きたかったなって。優星君の元カノとか?」

何を言ってるんだと美峰は自分で自分を責める。
そんなものを聞いても嫉妬するだけだろうと思い、美峰は優星を見つめて首を振った。

「あ、やっぱりいい。ちょっと気になっただけだから。本当は聞かなくて良いから」

優星の視界から自分を外したかった。
でも、優星はジッと美峰を見つめる。

「もう、何年も彼女いません。大学卒業して、しばらくして別れたし。明星の事だけで精一杯だったし。あの当時は甘えてくれるような子が好きだったけど、明星の世話をしていくうちに、どんな時にも甘えられることがシンドくなって」

寂しそうに笑いながら優星は言う。

「そんな時に、美峰さんと知り合ってずっと思ってた。頼りになる人だなって。大人で、余裕もあって、包容力もあって。会う度癒されてました」

そんな風に自分をずっと見ていてくれたと思うと、美峰は恥ずかしくて優星に抱きついた。

「僕、余裕あるように見えてたんだ。自分じゃ分かんないよ」

優星からそんな風に見てもらえていたんだと嬉しかった。

「仕事中の美峰さん、カッコイイです。余裕と自信と、全てあって。だから俺も安心して仕事できます。でもこうやって、俺には甘えて可愛い姿見せてくれて。もう、反則です」

優星の腕の中が気持ち良くて、優星の声を聞きながら美峰は幸せを感じていた。
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