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楽しい夜が一変して、妙子は凍りついて言葉が出てこない。

「やっぱりこんな生活はおかしいって思うんだ。確かに俺たちは愛情とは別の情で繋がってる。でも妙子さんはその情に流されたらダメだって思うんだ」

一方的な遼一に妙子は頭が真っ白になった。
でも何か言わないとダメだと口を開く。

「そんなッ!……流されてなんかいない。自分の意思でずっと遼一さんのそばにいたんだよ。この生活は、普通じゃないって初めから分かってて始めたことだし、私、今、仕事も楽しいし」

こんな話がしたい訳じゃないと妙子は必死になるが、遼一は首を振る。

「でも、仕事だけじゃ無く、恋愛も楽しんで欲しいんだ。俺に合わせて無理して、恋愛だけがすっぽりと抜け落ちてるよね。今の妙子さんは自分のこと好きでしょ?自信だって持っているはずだよ。俺のそばで俺に気を遣わせたくない」

好きなのは遼一さんなの!と妙子は言ってしまいたかったが、それはグッと堪えた。
それを言っては遼一にガッカリされる。
きっとそれこそ、即刻別れに繋がると思った。  

「最後の夜にする為にここを選んだの?そんなに私と別れたかったんだね」

妙子はもう無理なのかと悲しくなる。

「違うッ。俺の犠牲にしたくないから」

お互いが感情的にならないように、このバーに連れて来てこんな話をしてるんだと妙子は思った。
やっぱり女の自分では、遼一に愛されないと分かり悲しみに沈む。
男に生まれたかったと思うと涙が落ちそうになる。

「ごめん。出よう」

妙子は涙を見られたく無くてグッと堪え、遼一が会計を済ませている間に、先にエレベーターホールに立つ。

「妙子さん。もう、俺の犠牲にしたくないんだ」

やって来た遼一が再び繰り返す。
犠牲だなんて思ってないのに、どうしてそんなに冷たく言えるのかと、妙子は今までのことはやっぱりただのおままごとだったんだと思った。

「少し考えさせて」

妙子はそれ以外、もう何も言えなかった。
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