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1章 1年春〜夏
僕は困惑してるんです②
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「春人!」
少し息を切らしてナオくんはやって来た。
近づきすぎた僕と夕凪先輩を見て、ナオくんは眉を顰める。
僕のこと誰にでも近づく奴って思われてるかな。
「先輩、どういうことですか。」
「ちょ、ちょ、ちょっと。お前に威嚇されたら、俺に勝ち目ないから、やめてー!ねーハルちゃん、俺、君になんもしてないよね。」
「は、はい。ナオくん!ナオくんに会おうと思ってここで待ってたのを今日は部活がないって教えてくれてただけなんだ。」
「そう。」
低い声でナオくんは返事する。
「ふーん、『ナオくん』と『春人』ねー。二人はいつの間に仲良くなったの?」
先輩がニヤニヤする。
「先輩!部室の鍵持ってますよね?」
ナオくんは少し睨みながら先輩に言う。
「お、おう。」
「少し貸してください。あとで部屋に返しに行きますから。」
「えー。変なことする気?」
僕には影響がないようにナオくんは先輩に威嚇を放つ。
「わ、分かったよー。ちゃんと返してねー。」
「ほら、春人行くぞ。ここだと人が来てまともに話せないだろ。」
「う、うん。」
僕は慌ててナオくんの後を追いかける。
その背中に夕凪先輩は、
「ハルちゃーん、俺ハルちゃんのパートナー候補本気だからねー!!」
と叫ばれた。
僕がちらっと振り返ると先輩はニコニコしながら手を振っていた。
なんか、イケメンなのに勿体無い感じの人だなあ。
ナオくんと歩幅が違うせいか、少し僕が振り返っただけでナオくんはずっと先に行ってしまっている。走って追いかけた。
ナオくんは部室の鍵を開けて電気を点ける。
なんか部室っていうより、クラブハウスって感じ。さすが篠宮学園だな。
革張りのソファに座るように言われて大人しく座る。
ナオくんは備え付けの冷蔵庫からスポーツドリンクを取って僕にくれた。
「もらっていいの?」
「ここのは、自由にもらっていいから遠慮するな。」
「ありがと。」
僕は受け取って、一口だけ飲んでテーブルに置く。
ナオくんは立ったまま同じものをペットボトルの半分は飲んでしまった。
「で、わざわざ俺に会おうとしたのは何で?」
ナオくんは向かいのソファに座らずに、僕の近くにしゃがんで僕を覗き込むように見た。
何!?この態勢!
でも困惑してる場合じゃない。ちゃんと謝らなきゃ。
「あ、あの。き、昨日、突然キスしてごめんなさい。」
僕は頭を下げて謝る。
すると僕の髪が少しナオくんの前髪触れた。
するとまた、何とも言えないいい匂いがナオくんからする。
「あの、嫌だったでしょ?ほんとにごめんなさい。なのに付箋で勉強教えてくれてありがとう。」
僕は顔を上げて目を見てお礼を言う。
「なんで?」
「え?」
「なんで、キスした?」
ナオくんが優しい声で僕に聞く。
なんで?なんでだろう?
僕は一生懸命考える。
体が勝手にって理由にならない。僕がグルグル考えていると、ナオくんがもう一度優しく、
「何でなの?」
と尋ねる。
ナオくんの瞳の輝きと匂いとを閉じられた空間で目一杯感じる。
「すき。」
自然と口を突いて出た。
「ナオくんが好き。」
ああ、そうか。僕はナオくんが好きなんだ。
「たまらなく好き。」
そう思ったら急に体が熱くなる。
ああ、どうしようどんどん熱くなって苦しい。
「春人!」
何これ、パンツの中が濡れてくる。
「怖い。」
「お前、発情してる!」
「え?僕今までしたことない。」
「初めてなのか!?」
コクンと頷く。
ああ、ダメ。
ナオくんに触れたい。
僕はナオくんの方に手を伸ばす。
ナオくんは伸ばした手を握ってくれた。
「クッ!」
ナオくんは少し唸る。
そして噛み付くように僕にキスをする。
もっとして欲しい。
でもナオくんは、一回だけした後、そばにあったウィンドブレーカーを濡れたズボンを隠すように掛けて、僕を横抱きにする。
「すぐに医者に診せてやるから!」
そう言って僕を横抱きにしたままナオくんは走り出した。
体が熱くてたまらない。
ズボンの中に手を入れて自分のモノを扱きたくてたまらないのに、体に力が入らなくてもどかしい。
ナオくんが僕を運んでくれる振動さえ刺激で声が漏れてしまう。
「あっ、ふぅっ、んん!!」
「後少しだから。」
「また迷惑かけて、ごめん…ああっ!」
「気にするな。自分のことだけ考えろ。」
学園の本棟に近づいたのか人がたくさんいる気配がする。
僕が発情してるせいかフェロモンが漏れているのだろう。
周りが騒ついているのが朦朧とした中でも感じられた。
「えーもしかしてハルくん?」
「うわあ、匂いも最高!」
「すげーやりてー。」
「あいつ、よく襲わず我慢してるなあ。」
僕のフェロモンに当てられたαの生徒達は下卑た事を言っているが僕には言っている内容までは分からなかった。
「おい!そこの!先生にヒート起こした生徒が居るって先に伝えて来い!」
ナオくんが叫ぶ。
「ネックガードの内側に緊急ボタンあるから!」
誰か分からないが教えてくれる。
ナオくんは僕を横抱きにしたままそこにしゃがんだ。
緊急ボタンを教えてくれた生徒が僕に駆け寄って、ネックガードの内側に指を入れて押してくれた。
ああ、僕は知っていたのに初めてのヒートで頭が働かなくて忘れていた。
このボタンを押せば、ネックガードのGPSが作動して医療室にいる医師と看護師に知らせてくれる。
サイレンを鳴らして学園内の緊急車両がすぐにやって来た。ナオくんから医療スタッフに僕が引き渡される。
その時もう一度だけ、「ごめんね。」とナオくんに謝った。
少し息を切らしてナオくんはやって来た。
近づきすぎた僕と夕凪先輩を見て、ナオくんは眉を顰める。
僕のこと誰にでも近づく奴って思われてるかな。
「先輩、どういうことですか。」
「ちょ、ちょ、ちょっと。お前に威嚇されたら、俺に勝ち目ないから、やめてー!ねーハルちゃん、俺、君になんもしてないよね。」
「は、はい。ナオくん!ナオくんに会おうと思ってここで待ってたのを今日は部活がないって教えてくれてただけなんだ。」
「そう。」
低い声でナオくんは返事する。
「ふーん、『ナオくん』と『春人』ねー。二人はいつの間に仲良くなったの?」
先輩がニヤニヤする。
「先輩!部室の鍵持ってますよね?」
ナオくんは少し睨みながら先輩に言う。
「お、おう。」
「少し貸してください。あとで部屋に返しに行きますから。」
「えー。変なことする気?」
僕には影響がないようにナオくんは先輩に威嚇を放つ。
「わ、分かったよー。ちゃんと返してねー。」
「ほら、春人行くぞ。ここだと人が来てまともに話せないだろ。」
「う、うん。」
僕は慌ててナオくんの後を追いかける。
その背中に夕凪先輩は、
「ハルちゃーん、俺ハルちゃんのパートナー候補本気だからねー!!」
と叫ばれた。
僕がちらっと振り返ると先輩はニコニコしながら手を振っていた。
なんか、イケメンなのに勿体無い感じの人だなあ。
ナオくんと歩幅が違うせいか、少し僕が振り返っただけでナオくんはずっと先に行ってしまっている。走って追いかけた。
ナオくんは部室の鍵を開けて電気を点ける。
なんか部室っていうより、クラブハウスって感じ。さすが篠宮学園だな。
革張りのソファに座るように言われて大人しく座る。
ナオくんは備え付けの冷蔵庫からスポーツドリンクを取って僕にくれた。
「もらっていいの?」
「ここのは、自由にもらっていいから遠慮するな。」
「ありがと。」
僕は受け取って、一口だけ飲んでテーブルに置く。
ナオくんは立ったまま同じものをペットボトルの半分は飲んでしまった。
「で、わざわざ俺に会おうとしたのは何で?」
ナオくんは向かいのソファに座らずに、僕の近くにしゃがんで僕を覗き込むように見た。
何!?この態勢!
でも困惑してる場合じゃない。ちゃんと謝らなきゃ。
「あ、あの。き、昨日、突然キスしてごめんなさい。」
僕は頭を下げて謝る。
すると僕の髪が少しナオくんの前髪触れた。
するとまた、何とも言えないいい匂いがナオくんからする。
「あの、嫌だったでしょ?ほんとにごめんなさい。なのに付箋で勉強教えてくれてありがとう。」
僕は顔を上げて目を見てお礼を言う。
「なんで?」
「え?」
「なんで、キスした?」
ナオくんが優しい声で僕に聞く。
なんで?なんでだろう?
僕は一生懸命考える。
体が勝手にって理由にならない。僕がグルグル考えていると、ナオくんがもう一度優しく、
「何でなの?」
と尋ねる。
ナオくんの瞳の輝きと匂いとを閉じられた空間で目一杯感じる。
「すき。」
自然と口を突いて出た。
「ナオくんが好き。」
ああ、そうか。僕はナオくんが好きなんだ。
「たまらなく好き。」
そう思ったら急に体が熱くなる。
ああ、どうしようどんどん熱くなって苦しい。
「春人!」
何これ、パンツの中が濡れてくる。
「怖い。」
「お前、発情してる!」
「え?僕今までしたことない。」
「初めてなのか!?」
コクンと頷く。
ああ、ダメ。
ナオくんに触れたい。
僕はナオくんの方に手を伸ばす。
ナオくんは伸ばした手を握ってくれた。
「クッ!」
ナオくんは少し唸る。
そして噛み付くように僕にキスをする。
もっとして欲しい。
でもナオくんは、一回だけした後、そばにあったウィンドブレーカーを濡れたズボンを隠すように掛けて、僕を横抱きにする。
「すぐに医者に診せてやるから!」
そう言って僕を横抱きにしたままナオくんは走り出した。
体が熱くてたまらない。
ズボンの中に手を入れて自分のモノを扱きたくてたまらないのに、体に力が入らなくてもどかしい。
ナオくんが僕を運んでくれる振動さえ刺激で声が漏れてしまう。
「あっ、ふぅっ、んん!!」
「後少しだから。」
「また迷惑かけて、ごめん…ああっ!」
「気にするな。自分のことだけ考えろ。」
学園の本棟に近づいたのか人がたくさんいる気配がする。
僕が発情してるせいかフェロモンが漏れているのだろう。
周りが騒ついているのが朦朧とした中でも感じられた。
「えーもしかしてハルくん?」
「うわあ、匂いも最高!」
「すげーやりてー。」
「あいつ、よく襲わず我慢してるなあ。」
僕のフェロモンに当てられたαの生徒達は下卑た事を言っているが僕には言っている内容までは分からなかった。
「おい!そこの!先生にヒート起こした生徒が居るって先に伝えて来い!」
ナオくんが叫ぶ。
「ネックガードの内側に緊急ボタンあるから!」
誰か分からないが教えてくれる。
ナオくんは僕を横抱きにしたままそこにしゃがんだ。
緊急ボタンを教えてくれた生徒が僕に駆け寄って、ネックガードの内側に指を入れて押してくれた。
ああ、僕は知っていたのに初めてのヒートで頭が働かなくて忘れていた。
このボタンを押せば、ネックガードのGPSが作動して医療室にいる医師と看護師に知らせてくれる。
サイレンを鳴らして学園内の緊急車両がすぐにやって来た。ナオくんから医療スタッフに僕が引き渡される。
その時もう一度だけ、「ごめんね。」とナオくんに謝った。
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