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70.何度目かの朝
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何かをギュッと握った
その感触で目が覚めた
「あ……」
私の目の先には、ギュッと握った手があった
「ん?目が覚めたか?」
頭の上から声が聞こえる
カイリ殿下の腕に包まれながら私は目を覚ました
夢は記憶
私の封印されていた過去
今まで何も知らずに過ごしていたのは幸せだったのかもしれない
カイリ殿下の指が、私の髪をサラリと梳く
「何か見たか?」
私はコクリと頷いた
カイリ殿下の腕の中は心地良い
まるで満月の泉に体を浮かべているような
落ち着く空間だった
少しすると、カイリ殿下は体を起こした
あ………
離れてしまう体に寂しさを覚えて、起き上がって殿下をボーっと見つめる
カイリ殿下はベッドに背をもたれて、両手を軽く広げて微笑んだ
その手に誘われるように、私は殿下の胸元にギュッとしがみついて、顔を埋め、心のままに甘えた
私がその腕の中で癒されまくってると
「みさき。どこまで覚えている?」
と聞いてきた
どこまで?
どこまでとは?
どこからの記憶を辿るのでしょうか……
「うーーん………」
私がモンモンと考えていると
「いや……。覚えてないなら、いい。」
と、殿下は口元に手を当てて目線を逸らしながら意味深な言葉を残した
「昨晩だいぶ苦しそうだったのでな。何か辛い記憶を辿ったと思うんだが、大丈夫か?」
夢に見たことは、そうそう。こんなことあったあった。という「思い出した」という感覚に近かった。
私の感情どこいっちゃてるんだろ……
平然と自分を見下ろしている情景が思い浮かんだ
まるで他人のことのように
心と体が分離しているような違和感が残っている
自分のことが分からなくなる
もしかしたら、知らない方が良かったのかもしれない
何も知らないで、のほほんと毎日を送って、言われるがままにお仕事して、ユミさんにお小言を貰いながら、エリちゃんと日々を過ごす
変わり映えのない穏やかな日常を毎日繰り返す
うーん……でも、それでほんとにいいのかな
知らない不安と、知ってしまう恐怖
どちらも怖い気がする
「私はもう行かなくてはいけないが、1人で大丈夫か?」
カイリ殿下の腕の中で癒されまくった私は、はっ!と我に返った
「はっ!はいっ!」
すると、殿下は、私を自身から引き剥がすと、そのまま首元に顔を近づける
カイリ殿下の吐息がかかる
「何かあったら私を呼べ」
と耳元で囁くと、首筋にチュッとキスをした
不意に触れられたその感触に、ピクっと体が反応する
「あ……」
私は触れられた首筋に無意識に手を触れると、一欠片の記憶がサッと頭をよぎり
恥ずかしさのあまり、顔を伏せた
カイリ殿下は私の頭をポンポンと撫で、朝廷へ向けて部屋を去っていった
その感触で目が覚めた
「あ……」
私の目の先には、ギュッと握った手があった
「ん?目が覚めたか?」
頭の上から声が聞こえる
カイリ殿下の腕に包まれながら私は目を覚ました
夢は記憶
私の封印されていた過去
今まで何も知らずに過ごしていたのは幸せだったのかもしれない
カイリ殿下の指が、私の髪をサラリと梳く
「何か見たか?」
私はコクリと頷いた
カイリ殿下の腕の中は心地良い
まるで満月の泉に体を浮かべているような
落ち着く空間だった
少しすると、カイリ殿下は体を起こした
あ………
離れてしまう体に寂しさを覚えて、起き上がって殿下をボーっと見つめる
カイリ殿下はベッドに背をもたれて、両手を軽く広げて微笑んだ
その手に誘われるように、私は殿下の胸元にギュッとしがみついて、顔を埋め、心のままに甘えた
私がその腕の中で癒されまくってると
「みさき。どこまで覚えている?」
と聞いてきた
どこまで?
どこまでとは?
どこからの記憶を辿るのでしょうか……
「うーーん………」
私がモンモンと考えていると
「いや……。覚えてないなら、いい。」
と、殿下は口元に手を当てて目線を逸らしながら意味深な言葉を残した
「昨晩だいぶ苦しそうだったのでな。何か辛い記憶を辿ったと思うんだが、大丈夫か?」
夢に見たことは、そうそう。こんなことあったあった。という「思い出した」という感覚に近かった。
私の感情どこいっちゃてるんだろ……
平然と自分を見下ろしている情景が思い浮かんだ
まるで他人のことのように
心と体が分離しているような違和感が残っている
自分のことが分からなくなる
もしかしたら、知らない方が良かったのかもしれない
何も知らないで、のほほんと毎日を送って、言われるがままにお仕事して、ユミさんにお小言を貰いながら、エリちゃんと日々を過ごす
変わり映えのない穏やかな日常を毎日繰り返す
うーん……でも、それでほんとにいいのかな
知らない不安と、知ってしまう恐怖
どちらも怖い気がする
「私はもう行かなくてはいけないが、1人で大丈夫か?」
カイリ殿下の腕の中で癒されまくった私は、はっ!と我に返った
「はっ!はいっ!」
すると、殿下は、私を自身から引き剥がすと、そのまま首元に顔を近づける
カイリ殿下の吐息がかかる
「何かあったら私を呼べ」
と耳元で囁くと、首筋にチュッとキスをした
不意に触れられたその感触に、ピクっと体が反応する
「あ……」
私は触れられた首筋に無意識に手を触れると、一欠片の記憶がサッと頭をよぎり
恥ずかしさのあまり、顔を伏せた
カイリ殿下は私の頭をポンポンと撫で、朝廷へ向けて部屋を去っていった
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