53 / 93
53.ハグと私と緊張と……
しおりを挟む
2人に送られて教会に帰ってきた私は
今、
トキ殿下の腕の中におさまって身動きが取れないでいた
カイリ殿下は後宮の方の様子を見に戻って行った
トキ殿下に付き添われながら部屋に到着する
カイリ殿下がお部屋訪問に来るのは大分慣れたと思ったけど、トキ殿下が私の生活空間にいるのは、なんだか不思議だ
あれ?でも、幽閉生活してるのに、結構自由に出歩くのかな?
「ここに来て大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ。カイリがアレコレ手を回してくれちゃったから、大人しく外に出ることに。ね。」
そう言って、トキ殿下はソファーに座った
引きこもり辞めたんだ……
「なので……」
と言いながら殿下は私の手を強めに引き寄せる
「うわっ!!」
私はバランスを崩して、そのままトキ殿下に抱きついた
「すみませんっ!!」
慌てて離れようとしたけど、トキ殿下にしっかり抱きとめられていて、動けない
「あの……離して………欲しいのですが……」
「ん?なんで?」
いやいや。不可抗力で抱きついたままホールドされるって、心の準備というものが~…
そして、とても短いはずだけど、体感はとても長い時間が過ぎて今に至っている
「あの……いつまでこのままなんでしょうか……」
このドキドキに耐えられない
顔を上げたらトキ殿下に肌が触れ合う位置で目が合ってしまうし、かと言って、この抱きついたままの姿勢では私の恥ずかしいメーターが振り切ってしまう
「あ。苦しかった?」
そう言ってトキ殿下は腕のホールドを緩めて、私を少し体から離してくれた
開放されると思って油断した私は、そのまま腕から逃れようとソファーから降りるように体勢を整えた
が
トキ殿下は立ち上がろうとした私を開放してくれる訳ではなく、そのままバックハグをキメた
「ええっ!あのっ!!」
「ん?こっちの方が好きなのかなと思って」
いえいえ違います
離して貰える気配は無く、私は前のめりにうつむきながら、これからどうやってこの緊張に耐えれば良いか考えることにした
「う~ん……そうじゃないよ。こっち。」
と言いながら、トキ殿下は、私の目元を片手で覆いながら自分に背を預けるように私の姿勢を変えた
ひゃぁぁ!!!
トキ殿下の体温を背中に感じながら、私の顔の上には、トキ殿下の顔がある
目元を覆っていた片手を頭の上にずらし、サラサラと髪を撫でながら呟いた
「君が恥ずかしがり屋さんなのはわかっていたけど、もう少し慣れてくれると嬉しいな」
慣れるって何にですか!?
そもそも、私の生活にこんなに人と密着して触れ合うという習慣は無いのですがっ……
「まぁ、でも、カイリが嫌われたって言うのもわかる気がするな……クスッ」
そう言うと、トキ殿下はクスクスと笑いを堪えながら呟く
「先日は随分素直だったのにね?」
あぁぁぁあぁぁぁ……
恥ずかしさの思い出を引っ張り出さないでくださいぃーっ!
行き場のない手で顔を覆った
「とりあえず、力を抜いてもっと僕に甘えればいい」
甘えるって……苦手です……
そういえば、アルバさん達がトキ殿下に甘え方を教わると良いという話をしていたのを思い出した
「あのぉ……ルイ君とルカ君って、昔からあんな感じじゃなかったんですか?」
「ん?ルゥ達はまぁ、境遇も魔力もちょっと特殊だから仕方がなかったけど、僕にとっては可愛い弟だからね」
「2人には人の心の声が筒抜けみたいなものだから、周りを遠ざけてしまうのは仕方がなかっただろうね」
その2人をどうやって甘々にしたんだろう……
「アルバさんが、トキ殿下は甘えさせ上手だと言ってました」
「え?そうなのかい?別に普通だと思うけど……」
トキ殿下は後ろから抱きすくめていた私を軽く抱き上げ、自分の膝の上にのせると
「それがお好みなら……」
私の頬をトキ殿下の指先がなぞる
「僕は歓迎だけど?」
そう言って顔をすっと上向きにさせられて、トキ殿下とバッチリ目が合う
真っ直ぐ見つめてくる紫色の綺麗な瞳
わわわわわわわっ!!
目線が泳ぐ
「あ……あの……っ……!」
私は力なく抵抗する
すると、トキ殿下は柔らかく微笑み、
「そんな表情も可愛いけど、まずは……」
そう言って私を下ろし、普通にソファーの上に座らせてくれた
並んで座っているトキ殿下は、私の手をそっと握る
「この緊張を解かないとね」
ようやく開放されたわりには、ドキドキが止まりません
緊張するなという方が無理な話で
トキ殿下の手のひらの上で転がされてるだけですハイ
このまま手は離して貰えないのだろうか……
緊張は解ける訳もなく、ドキドキは少しおさまりつつ、無言に耐えられない私は、トキ殿下の方をチラリと見た
「ん?」
「いえ……」
誰か、トークの話題をください……
「フフッ……」
いきなりトキ殿下は笑いだした
「ごめんごめん。いつまでそんなにガチガチに緊張したままなのかなって思ってたんだけど、何も喋らなかったらもっと緊張するね?」
クスクス笑いながら話すトキ殿下は、とても楽しそうだ
「そうだ。明日一緒に出掛けようか?」
「え?どこへ?ですか?」
唐突な提案に驚くと
「ん~どこに行くとか全然考えてないけど……」
「どこか景色が良い所にしようか。どうだい?」
「はい。」
どう答えればいいのか分からず、ぶっきらぼうに答えてしまった
「じゃあ明日また迎えに来るよ」
そう言って握っていた私の手をすくい上げると、指にチュッとキスを落として部屋を去っていった
トキ殿下……距離感近すぎて私の心臓がもたない
こうして私のお出かけが決まった
結局あの噴水は何だったんだろう
トキ殿下の攻撃がすごすぎて、すっかり忘れていた
お姉様の声がした
あれも一体なんだったのか……
頭痛は不思議と消えていた
うーーん。
考えても私に分かることはなくて
とりあえず寝て明日のお出かけに備えることにした
今、
トキ殿下の腕の中におさまって身動きが取れないでいた
カイリ殿下は後宮の方の様子を見に戻って行った
トキ殿下に付き添われながら部屋に到着する
カイリ殿下がお部屋訪問に来るのは大分慣れたと思ったけど、トキ殿下が私の生活空間にいるのは、なんだか不思議だ
あれ?でも、幽閉生活してるのに、結構自由に出歩くのかな?
「ここに来て大丈夫なんですか?」
「ん?あぁ。カイリがアレコレ手を回してくれちゃったから、大人しく外に出ることに。ね。」
そう言って、トキ殿下はソファーに座った
引きこもり辞めたんだ……
「なので……」
と言いながら殿下は私の手を強めに引き寄せる
「うわっ!!」
私はバランスを崩して、そのままトキ殿下に抱きついた
「すみませんっ!!」
慌てて離れようとしたけど、トキ殿下にしっかり抱きとめられていて、動けない
「あの……離して………欲しいのですが……」
「ん?なんで?」
いやいや。不可抗力で抱きついたままホールドされるって、心の準備というものが~…
そして、とても短いはずだけど、体感はとても長い時間が過ぎて今に至っている
「あの……いつまでこのままなんでしょうか……」
このドキドキに耐えられない
顔を上げたらトキ殿下に肌が触れ合う位置で目が合ってしまうし、かと言って、この抱きついたままの姿勢では私の恥ずかしいメーターが振り切ってしまう
「あ。苦しかった?」
そう言ってトキ殿下は腕のホールドを緩めて、私を少し体から離してくれた
開放されると思って油断した私は、そのまま腕から逃れようとソファーから降りるように体勢を整えた
が
トキ殿下は立ち上がろうとした私を開放してくれる訳ではなく、そのままバックハグをキメた
「ええっ!あのっ!!」
「ん?こっちの方が好きなのかなと思って」
いえいえ違います
離して貰える気配は無く、私は前のめりにうつむきながら、これからどうやってこの緊張に耐えれば良いか考えることにした
「う~ん……そうじゃないよ。こっち。」
と言いながら、トキ殿下は、私の目元を片手で覆いながら自分に背を預けるように私の姿勢を変えた
ひゃぁぁ!!!
トキ殿下の体温を背中に感じながら、私の顔の上には、トキ殿下の顔がある
目元を覆っていた片手を頭の上にずらし、サラサラと髪を撫でながら呟いた
「君が恥ずかしがり屋さんなのはわかっていたけど、もう少し慣れてくれると嬉しいな」
慣れるって何にですか!?
そもそも、私の生活にこんなに人と密着して触れ合うという習慣は無いのですがっ……
「まぁ、でも、カイリが嫌われたって言うのもわかる気がするな……クスッ」
そう言うと、トキ殿下はクスクスと笑いを堪えながら呟く
「先日は随分素直だったのにね?」
あぁぁぁあぁぁぁ……
恥ずかしさの思い出を引っ張り出さないでくださいぃーっ!
行き場のない手で顔を覆った
「とりあえず、力を抜いてもっと僕に甘えればいい」
甘えるって……苦手です……
そういえば、アルバさん達がトキ殿下に甘え方を教わると良いという話をしていたのを思い出した
「あのぉ……ルイ君とルカ君って、昔からあんな感じじゃなかったんですか?」
「ん?ルゥ達はまぁ、境遇も魔力もちょっと特殊だから仕方がなかったけど、僕にとっては可愛い弟だからね」
「2人には人の心の声が筒抜けみたいなものだから、周りを遠ざけてしまうのは仕方がなかっただろうね」
その2人をどうやって甘々にしたんだろう……
「アルバさんが、トキ殿下は甘えさせ上手だと言ってました」
「え?そうなのかい?別に普通だと思うけど……」
トキ殿下は後ろから抱きすくめていた私を軽く抱き上げ、自分の膝の上にのせると
「それがお好みなら……」
私の頬をトキ殿下の指先がなぞる
「僕は歓迎だけど?」
そう言って顔をすっと上向きにさせられて、トキ殿下とバッチリ目が合う
真っ直ぐ見つめてくる紫色の綺麗な瞳
わわわわわわわっ!!
目線が泳ぐ
「あ……あの……っ……!」
私は力なく抵抗する
すると、トキ殿下は柔らかく微笑み、
「そんな表情も可愛いけど、まずは……」
そう言って私を下ろし、普通にソファーの上に座らせてくれた
並んで座っているトキ殿下は、私の手をそっと握る
「この緊張を解かないとね」
ようやく開放されたわりには、ドキドキが止まりません
緊張するなという方が無理な話で
トキ殿下の手のひらの上で転がされてるだけですハイ
このまま手は離して貰えないのだろうか……
緊張は解ける訳もなく、ドキドキは少しおさまりつつ、無言に耐えられない私は、トキ殿下の方をチラリと見た
「ん?」
「いえ……」
誰か、トークの話題をください……
「フフッ……」
いきなりトキ殿下は笑いだした
「ごめんごめん。いつまでそんなにガチガチに緊張したままなのかなって思ってたんだけど、何も喋らなかったらもっと緊張するね?」
クスクス笑いながら話すトキ殿下は、とても楽しそうだ
「そうだ。明日一緒に出掛けようか?」
「え?どこへ?ですか?」
唐突な提案に驚くと
「ん~どこに行くとか全然考えてないけど……」
「どこか景色が良い所にしようか。どうだい?」
「はい。」
どう答えればいいのか分からず、ぶっきらぼうに答えてしまった
「じゃあ明日また迎えに来るよ」
そう言って握っていた私の手をすくい上げると、指にチュッとキスを落として部屋を去っていった
トキ殿下……距離感近すぎて私の心臓がもたない
こうして私のお出かけが決まった
結局あの噴水は何だったんだろう
トキ殿下の攻撃がすごすぎて、すっかり忘れていた
お姉様の声がした
あれも一体なんだったのか……
頭痛は不思議と消えていた
うーーん。
考えても私に分かることはなくて
とりあえず寝て明日のお出かけに備えることにした
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。
拝啓 私のことが大嫌いな旦那様。あなたがほんとうに愛する私の双子の姉との仲を取り持ちますので、もう私とは離縁してください
ぽんた
恋愛
ミカは、夫を心から愛している。しかし、夫はミカを嫌っている。そして、彼のほんとうに愛する人はミカの双子の姉。彼女は、夫のしあわせを願っている。それゆえ、彼女は誓う。夫に離縁してもらい、夫がほんとうに愛している双子の姉と結婚してしあわせになってもらいたい、と。そして、ついにその機会がやってきた。
※ハッピーエンド確約。タイトル通りです。ご都合主義のゆるゆる設定はご容赦願います。
【R18】騎士たちの監視対象になりました
ぴぃ
恋愛
異世界トリップしたヒロインが騎士や執事や貴族に愛されるお話。
*R18は告知無しです。
*複数プレイ有り。
*逆ハー
*倫理感緩めです。
*作者の都合の良いように作っています。
【完結】魅了が解けたあと。
乙
恋愛
国を魔物から救った英雄。
元平民だった彼は、聖女の王女とその仲間と共に国を、民を守った。
その後、苦楽を共にした英雄と聖女は共に惹かれあい真実の愛を紡ぐ。
あれから何十年___。
仲睦まじくおしどり夫婦と言われていたが、
とうとう聖女が病で倒れてしまう。
そんな彼女をいつまも隣で支え最後まで手を握り続けた英雄。
彼女が永遠の眠りへとついた時、彼は叫声と共に表情を無くした。
それは彼女を亡くした虚しさからだったのか、それとも・・・・・
※すべての物語が都合よく魅了が暴かれるとは限らない。そんなお話。
______________________
少し回りくどいかも。
でも私には必要な回りくどさなので最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
後悔はなんだった?
木嶋うめ香
恋愛
目が覚めたら私は、妙な懐かしさを感じる部屋にいた。
「お嬢様、目を覚まされたのですねっ!」
怠い体を起こそうとしたのに力が上手く入らない。
何とか顔を動かそうとした瞬間、大きな声が部屋に響いた。
お嬢様?
私がそう呼ばれていたのは、遥か昔の筈。
結婚前、スフィール侯爵令嬢と呼ばれていた頃だ。
私はスフィール侯爵の長女として生まれ、亡くなった兄の代わりに婿をとりスフィール侯爵夫人となった。
その筈なのにどうしてあなたは私をお嬢様と呼ぶの?
疑問に感じながら、声の主を見ればそれは記憶よりもだいぶ若い侍女だった。
主人公三歳から始まりますので、恋愛話になるまで少し時間があります。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完結】冷酷眼鏡とウワサされる副騎士団長様が、一直線に溺愛してきますっ!
楠結衣
恋愛
触ると人の心の声が聞こえてしまう聖女リリアンは、冷酷と噂の副騎士団長のアルバート様に触ってしまう。
(リリアン嬢、かわいい……。耳も小さくて、かわいい。リリアン嬢の耳、舐めたら甘そうだな……いや寧ろ齧りたい……)
遠くで見かけるだけだったアルバート様の思わぬ声にリリアンは激しく動揺してしまう。きっと聞き間違えだったと結論付けた筈が、聖女の試験で必須な魔物についてアルバート様から勉強を教わることに──!
(かわいい、好きです、愛してます)
(誰にも見せたくない。執務室から出さなくてもいいですよね?)
二人きりの勉強会。アルバート様に触らないように気をつけているのに、リリアンのうっかりで毎回触れられてしまう。甘すぎる声にリリアンのドキドキが止まらない!
ところが、ある日、リリアンはアルバート様の声にうっかり反応してしまう。
(まさか。もしかして、心の声が聞こえている?)
リリアンの秘密を知ったアルバート様はどうなる?
二人の恋の結末はどうなっちゃうの?!
心の声が聞こえる聖女リリアンと変態あまあまな声がダダ漏れなアルバート様の、甘すぎるハッピーエンドラブストーリー。
✳︎表紙イラストは、さらさらしるな。様の作品です。
✳︎小説家になろうにも投稿しています♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる