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【4章】隠しキャラ攻略
1.
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ハッと、目が覚める。
心臓がバクバク鳴っている。
私は伝っていた涙の跡を拭った。
あの人は誰だろう。私がドラクさんと呼ぶ見たことの無い男性。
夢にしてははっきりとしたそれに居心地が悪くなりながら、もそもそと起き上がる。さっさと準備をしよう。今日は弟の…ディーの一周忌なのだから。
窓から外を見ると雨が降っていて、もやもやした嫌な気分は更に増していった。
________
「…あれからもう、1年が経つのね」
墓前に花を供えながら母さんが言う。その声は穏やかで、でも、父さんはそんな母さんを支えるように傘を持ったのとは別の手を母さんの肩に手を添えて そっとさすっていた。
私の背にある十字架。重すぎるそれは、家族が何を言おうとも軽くなることはない。
「…シーも、少しずつ 自分を責めないようにしてね」
「辛くなったら、すぐに父さんか母さん…もちろんエィフィルやティビーでも良い。溜め込まないできちんと言いなさい。……お前が背負う必要なんて、どこにもないんだから」
私を挟んで座る兄と姉が父の言葉に頷いて、優しい色を浮かべているであろう瞳を私に向けているのが分かる。
「………うん、ありがとう」
もう少しここにいるから 先に帰ってて。そう告げると、両親は私の頬にキスをして去っていった。兄は大きな手で私の頭を優しく撫でて、姉は痛いくらいに強く私を抱き締めて、帰って行く。
そんな家族の愛が、私を責めない家族の優しさが、逆に私には身を裂かれるほどに 痛くて辛い。
________
やけにリアルな夢の中でも、私はこうしてお墓の前に座っていた。ここに来てからずっと、デジャヴが起きているような気持ち悪さがある。
この後、帰り道で兄さんと姉さんが待っている。
6月の雨の日に、店に男性が飛び込んでくる。
その男性はドラクさんという人。マディと約束したから来たのだと言う。
それから度々来てくれるようになった男性。
私は彼のことが好きだった。
彼は有名なパーティーのリーダーで、貴族。
娘のように思っていると言われても、好きだった。
旅に出るドラクさんに告白をして、振られて。
夢にしてははっきりとしすぎた、記憶と言った方がしっくりくるそれを思い返しているうちに、私は泣いていた。
これは、一体何の記憶なの?
心臓がバクバク鳴っている。
私は伝っていた涙の跡を拭った。
あの人は誰だろう。私がドラクさんと呼ぶ見たことの無い男性。
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窓から外を見ると雨が降っていて、もやもやした嫌な気分は更に増していった。
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「…あれからもう、1年が経つのね」
墓前に花を供えながら母さんが言う。その声は穏やかで、でも、父さんはそんな母さんを支えるように傘を持ったのとは別の手を母さんの肩に手を添えて そっとさすっていた。
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私を挟んで座る兄と姉が父の言葉に頷いて、優しい色を浮かべているであろう瞳を私に向けているのが分かる。
「………うん、ありがとう」
もう少しここにいるから 先に帰ってて。そう告げると、両親は私の頬にキスをして去っていった。兄は大きな手で私の頭を優しく撫でて、姉は痛いくらいに強く私を抱き締めて、帰って行く。
そんな家族の愛が、私を責めない家族の優しさが、逆に私には身を裂かれるほどに 痛くて辛い。
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やけにリアルな夢の中でも、私はこうしてお墓の前に座っていた。ここに来てからずっと、デジャヴが起きているような気持ち悪さがある。
この後、帰り道で兄さんと姉さんが待っている。
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私は彼のことが好きだった。
彼は有名なパーティーのリーダーで、貴族。
娘のように思っていると言われても、好きだった。
旅に出るドラクさんに告白をして、振られて。
夢にしてははっきりとしすぎた、記憶と言った方がしっくりくるそれを思い返しているうちに、私は泣いていた。
これは、一体何の記憶なの?
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