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第3章 『エルフ国編②』
第5話 「魔王様、情報交換をする」
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王城に到着して案内されたのは、貴賓室だった。
見覚えがあるのは、以前表敬訪問をした際も、この部屋に通されたからである。
煌びやかな調度品が目を愉しませ、華美すぎない生け花から香る匂いすらもが上品であり、さすがは身分の高い者を丁重に持て成す部屋なだけはあった。
ちなみに室内には、私と黒エルフ王、そしてアテナとデモナの四人だけである。
最初こそ部屋にいた複数のメイドたちは、手押し台車から飲み物や高級品だらけの軽食をテーブルに並べた後、すぐに退出していたからだ。
「ドーエンス殿、いまの私は一介の冒険者に過ぎないんだ。普通の応接室でも……」
「俺とお前の仲なんだ。これくらいの配慮は夫として当然のことだろう」
「……改めて言っておくが、私と貴方は婚姻関係どころか、婚約すらしていない」
「ふむ……こういうのもあれだが、俺は優良物件だと思うぞ? 俺と結婚すれば、もれなくその身分は国王夫人だ。そうなればこの国の権力はお前のものでもあり、お前を追い出した魔族国に復讐だって出来るんだぞ?」
「……私は別に、魔族国を滅ぼしたいわけじゃない。復讐も考えてはいない。それにそもそもが、追い出されたのは魔王城であって魔族国じゃない」
さらに細かく言うならば、私を直接的に追い出したのは新魔王なのだが、そこまで詳しくこの場で述べる必要性もないので、私はそれ以上は言わないことにした。
そうか、と黒エルフ王はひとつ頷く。
「だが、俺としては許せん気持ちでいっぱいなんだがな。あれだけ国の為に尽くしてきたお前を、弱体化したからというだけの理由で切り捨てるなど。夫として怒って当然だろう?」
「気持ちは在り難いが……というか、さりげなく”夫”を主張するのはそろそろ止めないか?」
「まあ、気にするな。外堀から埋めて既成事実を構築してるだけだからな」
「よくもまあ堂々と……」
まるで取り合わない黒エルフ王に、私は嘆息ひとつ。
そんな私の傍にはアテナが静かに控えているものの、彼女は両目を硬く閉じて外界からの情報をシャットアウトしていたりする。
黒エルフ王側に佇むデモナからの熱い視線が、鬱陶しかったようである。
しかしながら、両目を閉じたアテナの姿もが愛おしいようで、デモナはじーっと凝視していたが。
「そんなことよりも、だ。どうした? 食べないのか? お前のために急いで持って来させたんだ。遠慮なく飲み食いしてくれ」
「……眠り薬とか入っていないだろうな?」
「おお、そんな手があったか!」
「……勘弁してくれ」
「冗談だ。さすがにそんな卑劣な真似はしないさ、お前に嫌われては意味がないからな」
何も入っていないことを証明するように、黒エルフ王は自ら適当なお菓子を手に取り、頬張る。
さすがに一国の王に毒見をさせた以上、王の肩書きを失った私がこのまま食さなければ失礼に当たってしまうので、仕方なく、彼の言葉を信じて適当なお菓子を口の中へ。
「……うまいな」
「だろう? この王都でしか造られていない特産品だ」
「なるほどな」
身体に何の変調も感じられないので、警戒を解いた私はそのお菓子をさらに手にとり、再び咀嚼。
私の無警戒で食べる姿を嬉しそうに眺めた後、黒エルフ王は表情を真剣なものに変えてきた。
「実際のところ、お前には本気で俺の妻になってもらいたいと思っている」
「……私を利用して、”あの人”から権力を取り戻すためだろう?」
紅茶で喉を潤してから私が指摘すると、黒エルフ王は苦い顔になった。
「実質、この国の権力を握っているのは……母上だからな」
「王母レインクレイ」
私もが、苦々しい声でその名を呟く。
世界樹内で、あの黒エルフが今際の際に、途切れ途切れに呟いた名前である。
またの名を『毒婦』と、心の中で付け足しておく。
さすがに息子の前で、母親をあしざまにいうわけにはいかないので、表現を控えたのである。
とはいえ、その認識は私以外もが普通に抱いていることではあったが。
目的のためならば手段を問わない冷酷無比さに加え、天性の男たらしで種族を問わず数々の男を手玉に取り、篭絡し、前黒エルフ王もその中のひとりであり、彼女は王妃の座へと。
前王が存命中は王妃特権でやりたい放題をした上に、その手腕で権力を手中に収めており。
前王が亡くなり、それを期に息子だったドーエンスが新黒エルフ王に就任した後は、王母として表舞台からは去ったものの、彼女が築いた数々の悪評が世間から消えることはなかったのだ。
気まぐれで彼女にダンナや彼氏を寝取られた女たちは、しかしながら彼女に恨みを抱くことはなく。
男だけではなく女ですらが、性に奔放な彼女にとっては獲物なのである。
抗議に赴いた女たちは、一泊の後、翌日には彼女の虜となっていたのだ。
(男にしか興味がないドラギアのほうが、まだマシだな)
レインクレイ……王母であり毒婦。
そんな彼女には、未だに、黒い噂が絶えないのである。
アテナにあからさまな執着を見せていたデモナすらもが渋面をつくっており、ひとつ息を吐いた黒エルフ王が、改めて私を真っすぐに見つめてきた。
「利用という表現は的確じゃない。心底お前に惚れていることに変わりはないんだ。だが……お前が妻となれば、少しは──母上に逆らうことができるからな」
「利用ということに変わりないと思うがな?」
「クレアナード。言葉遊びで、俺をイジメないでくれ。俺のお前への想いが本物なのは、お前とて知っているだろう?」
「……さあな」
私は言葉を濁すことで応える。
結局のところ、利用したという意味においては、私も彼を責めることはできないのだ。
彼の好意を利用して、こうしてこの場にいるのだから。
「……ドーエンス殿」
「クレアナード。前みたく、呼び捨てで構わないんだが」
「さすがに、一国の王を呼び捨てにするわけには……」
「距離を感じて、寂しく思わされる。せめて、呼び捨てぐらいはしてくれ」
王というのは、一種の孤独感みたいなものがあったりする。
臣下が皆、距離を置いてくるからだ。
そしてドラギアもがそうであったように、かつての私にも、その孤独感には覚えがあったりする……
(それでも私とドラギアには救いはあったがな)
私にはアテナが、ドラギアにはレイがいた。
しかしながら、黒エルフ王とデモナには、私たちのような関係は構築できてはいないようである。
男と女の違い、というやつなのかもしれないが……
「…………わかった。では、ドーエンス。そろそろ本題に入ってもいいか?」
「ああ。元々そのつもりで、王都で活動していたのだろうからな」
やはり気づいていたか、と私は内心で彼を評価する。
性格にやや難があるものの、彼は決して無能な王ではないのである。
「さすがに、王がおいそれと王都を離れるわけにはいかんからな。いずれはそっちから王都に来るだろうと思い、ずっと待っていた。すぐに迎えを寄越せなかったのは、こちらも忙しい身でな。事情は察してくれ」
「なるほど。どこぞの王に聞かせてやりたいな」
冷やかしで王都を簡単に離れた王が脳裏を過り、私は苦笑い。
そして私は表情を真剣なものへと変え、単刀直入に本題に入った。
「世界樹の件、どこまで知っている?」
※ ※ ※
「やはり、その件だったか」
ドーエンスは予想していたようで、これといって驚いた様子も見せず、淡々と答えてきた。
「はっきり言おう。詳しいことは俺は知らん。公表されている以外のことは、耳に入ってこない」
「言い方を変えよう。何をどこまで知っている?」
「俺の口から言わせたいのだな?」
「ああ。貴方が嘘を言う人物じゃないのは知っているからな」
「おお……そう俺を評価してくれていたのか。だったら、俺がお前を愛しく思っていることも──」
「ドーエンス、いま真面目な話をしている時だ」
「……っ」
ジロリと私が睨んだことでドーエンスは顔をひきつらせた後、「こっちも、かなり真面目な話なんだがなぁ……」とぼそりと呟いてから。
「俺の耳に入っている情報は、性別は知らんが、黒エルフのひとりが世界樹の”核”を盗み出そうとして、その結果として世界樹が暴走したって程度だ」
「なるほど」
「国としての立場は、いち国民の罪を背負って法外な賠償金など支払えないということだ。だから個人の責任であり自業自得。国は一切関知しないというのが、わが国の方針だ」
「まあ、当然といえば当然の判断か」
そんなことをいちいちしていては、あっという間に国庫が破産してしまう。
「ドーエンス。今回の一件、お前ならばどう見る? いち個人の暴走か? あるいは──」
私が言うと、問われたドーエンスは意外な事に即答だった。
「恐らくは、母上の企みだろうな」
その声には迷いがなかった。
アテナをじーっと見ているデモナもピクンと眉根を動かしたが何も言わなかったのは、同感なのだろう。
そして口を挟むつもりはないようでアテナの視姦を再開し、外からの情報を遮断している彼女は無反応。
一拍間を置いてから、ドーエンスが根拠を述べてきた。
「白エルフの警備を掻い潜り、尚且つ世界樹内を単騎で突破するだけの実力がある人物。それほどの奴が、ただの盗みで行動を起こすとは思えない。結果的に白エルフ領に混乱を引き起こしたことを鑑みるに、白エルフを排除したがっている母上の仕業と考えるほうが、自然だろう」
「……かもしれないが、それを国王のお前が認めていいのか?」
「お前の前だからさ。国益や国同士の関係がさらに悪化することを、お前が安易にするわけないだろう?」
「まあ……確かに、な」
いくらドラギアから依頼を受けていたとはいえ、その結果が国同士の種族戦争に発展してしまいかねないのならば、さすがに報告は躊躇われてしまう。
私は破滅的思考の持ち主ではないのだから、多くの人間が命を失う事態を招くことを避けたいと思っても、別に不思議なことではないだろう。
「だがドーエンス。現状、何も証拠はないわけだが、もしそれが事実だった場合、さすがに無罪放免というわけにはいかないぞ? 今後また同じことをするかもしれないんだ。何かしらの対策を──」
私がそこまで言葉を述べたところで、いきなりドアが開けられたかと思うと、堂々とした足取りで入ってくる人物がいた。
「久しいではないか、クレアナード」
艶のある声で名前を言われた私は、緊張感を漲らせた。
スリットの入った煽情的なドレスをゆったりと纏い、上品ともいえるし下品ともいえる絶妙なバランスを誇る色香を放つ 妖艶な黒エルフの女。
煌びやかな装飾品はほとんど身に着けていないというのに、その全身からは優雅な高貴さ、あるいは清純さを醸し出しており、装飾品で誤魔化す必要がないほどに、彼女自身が一種のオーラを帯びていた。
そして、憂いたような気だるげな光が宿る双眸や、香水か体臭か鼻腔と脳髄をくすぐる甘い香りが、男のみならず同性すらが、欲情を誘われるのである。
これで成人している一児の母なのだから、本当に驚かされる。
「……レインクレイ殿」
「母上。なぜこちらに?」
私に名を呼ばれ、息子に問われた王母は、艶やかな微笑を浮かべてきた。
「何やらお前たちだけで睦言をしていると小耳に挟んだのでな。妾も混ぜてもらおうと思って来たぞ」
彼女はそう言いつつ歩き出し、私へと目を向けてくる。
「クレアナード、噂は聞いたぞ? 憔悴しているかと思ったが、なかなか元気そうではないか」
「……貴女も、壮健そうで何より」
「くくく。お世辞でも、もう少し心を込めてほしいな?」
彼女に追随するおとなしそうな侍女が持ってきた椅子に優雅に座り、私たちを見回した。
「ほれ、どうした? 妾に気にせずに続けてくれてよいぞ? 何を話していたかは知らんがな」
いきなり入ってきてこちらの話の腰を折っておきながらの、この堂々とした態度である。
むしろ清々しいとさえ言えるかもしれない。
「──っ」
王母の傍らにかしずく侍女が、声を押し殺して身を震わせた。
侍女の肩に腕を回した王母が、手慰みで彼女の胸を揉みしだいているのだ。
この凶行に、しかし侍女は嫌がるどころか恍惚な表情で小さく喘いでおり。
(相変わらず、か……)
私は内心で溜め息ひとつ。
まあ、気にしても仕方ないことなので、その行為については無視をする。
「レインクレイ殿。世界樹の一件は耳に入っていると思うんだが」
「噂程度ならばな。ドーエンスと同程度の情報しか、妾も知らんぞ?」
「……なるほど」
堂々とした態度からは、嘘を吐いているようにはまるで見えなかった。
本当に知らないのか、嘘を吐いているのか。
後者の場合は、かなりの役者だろう。
(証拠はないからな……)
だから私は、切り口を変えてみることにした。
「世界樹の暴走の件、貴女ならどうみる?」
「ふむ……まあ、不思議なことはないだろう。なにせ”核”を失ったのだからな。暴走して当たり前だと思うぞ」
「……どういう意味だ?」
「妾が調べ上げた結論から、世界樹とは精霊ではなく魔獣の一種なのだからな」
とんでもないことを言い出してきた。
目を閉じているアテナ以外、私を含むその場にいる全員が、驚愕に目を見開く。
そんな定説は聞いたことがなく、仮に事実だったならば、エルフ族は魔獣を信仰していたことになってしまう。
(おいおいおい……この女、何を言い出すんだ)
とは思うものの、こう見えて彼女、学者肌の一面もあったりするのだ。
ひとは見た目で判断してはいけないという、極めて稀有な例だろう。
眼鏡をかけながらも妖艶な態度で司書室で読書に耽る姿というのも、なかなか想像しづらいが。
「は、母上。どのような根拠があってそのような……」
「考えてみるが良い。そもそもが、精霊の老廃物が魔獣だという考え自体がおかしいということだ。人型の精霊が、老廃物で魔獣を生み出すのか? そんな話は聞いたことがない。それなのに、人型でない精霊は魔獣を生み出すようになるのか、という話だ」
アテナをちらりと見るが、当の彼女は両目を閉じたまま無反応。
学者の顔になっているレインクレイは、構わずに話を続ける。
「世界樹『ガイア』が精霊ではなく魔獣と仮説するならば、単に眷属を生み出しているだけに過ぎず、何も不思議なことはないのだよ。樹木型の魔獣が生み出されることもそれで説明がつくし、暴走の件も”核”が人間でいうところの脳みたいな働きを担っていたとすれば、納得もいく。これもまた、精霊にはない特徴だ。よって、世界樹だけが特殊な精霊なのではなく、魔獣だと仮定するほうがあらゆる面で納得できるのだよ」
「それはそうかもしれないが……あれが魔獣だと……? あんな巨大な魔獣が存在するというのか……?」
さすがに私も言葉がなかったが。
「にゃはは~! 『ガイア』は魔獣ってか魔物だよ~ン♪」
何の前触れもなく。
唐突に、浮遊するネミルが姿を現すのだった。
※ ※ ※
※ ※ ※
「では内通者の件、お任せします」
そう述べて、密偵少年──ダミアンは、マイアス宅を後にする。
彼から情報を得たマイアスとラーミアは、使用人抜きでふたりだけで、すぐに家中を捜索をする──
「まいったね。まさか、こんなに見つかるとは……」
「……信じられませんわね……」
テーブルの上に置かれているのは、盗聴器だった。
しかもその数は、全部で5個もあったのだ。
これらの盗聴器により、各街に配置していた密偵が”あちら”に特定されてしまったのだろう。
「いつの間に……というか、仕掛けられるのは、この屋敷で働いている使用人の誰かだろうけど……」
「あなた……寝室にも仕掛けられていたということは、もしかして……」
頬を紅潮させるラーミアの言わんとすることを察したマイアスは、静かに顔を横に振る。
「仕方ないさ。僕らは、盗聴器があるなんて知らなかったんだから」
「でも……っ」
「恥ずかしい気持ちはわかるけれど、いまは誰が内通者なのか特定しないといけない」
「……そうですわね。この恥辱と怒りを、その内通者にぶつけましょう!」
──内偵を進めた結果。
ひとりの掃除婦があぶり出される。
掃除と称してならばどの部屋にも入れるために、盗聴器も仕掛けやすかったのだろう。
なぜ裏切ったのか……理由は簡単だった。金に目がくらんだのである。
盗聴器を仕掛けるだけの簡単な作業で、この家での1年分の給料分が支払われるらしく、その掃除婦は、軽い気持ちで仕掛けたようだった。
涙ながらに罪を告白した彼女は、自分を買収した者の名を自白するも、恐らくはただの末端だろう。
トカゲの尻尾切りであり、本命にまでは、到達できないだろう。
「あの筋肉ダルマ……まさか、こんな絡め手を仕掛けてくるなんて……っ」
「僕も、油断していたとしか言えない」
「というか、むしろこんなことを発案したのは、側近のドバンかもしれませんわね」
筋肉ダルマの知恵袋を示唆すると、マイアスも同意だったらしく。
「こういうイヤらしい手は、確かにそうかもしれないね」
「ダミアンからの報告だと、まだお姉さまの居場所は特定できていないみたいですけど……」
「まだ彼らが義姉さんを始末しようとしていることは、今回の件で判明したからね。だから僕らも、今まで以上に警戒を強めないといけない」
「……どうしてそこまでお姉さまに固執するのかしら。もうお姉さまには、権力なんてないのに」
「僕らと同じように、失脚したいまでも義姉さんを支持する者は多いからね。そういう目障りな奴らを一掃するには、やっぱり義姉さんを始末したほうが早いんだと思うよ」
「お姉さま……」
敬愛する姉に想いを馳せてから、ラーミアは拳をぎゅっと握り締める。
「お姉さまの安全を考慮するなら、何もしないほうがいいのかもしれないですけど……でも。でも、やっぱりお姉さまがいま何をしているのか、元気なのか、知りたいですわ……」
「僕も同じ気持ちだよ。義姉さんの安否は把握しておきたいからね。いざという時、すぐに連絡をつけられるようにするためにもね」
「……これからどうしますの?」
「とりあえず、僕たち側の内通者は排除したし、また密偵を各地の街に配置しようと思う。それと……こっちからも、ブレア陣営に仕掛けようと思ってる」
「こっちから?」
「あっちの陣営に内通者を作るか、もしくは送り込む。いつまでも受け身じゃ、今回みたいなことが起きかねないからね」
「いよいよ、動くのですわね?」
「ああ。とはいっても、まだ内通者を作るレベル程度だけどね」
「私たちを怒らせたこと、あの筋肉ダルマたちに、身をもって教えてあげましょう!」
闘志をみなぎらせるラーミアを、マイアスは頼もし気な様子で見つめるのだった。
見覚えがあるのは、以前表敬訪問をした際も、この部屋に通されたからである。
煌びやかな調度品が目を愉しませ、華美すぎない生け花から香る匂いすらもが上品であり、さすがは身分の高い者を丁重に持て成す部屋なだけはあった。
ちなみに室内には、私と黒エルフ王、そしてアテナとデモナの四人だけである。
最初こそ部屋にいた複数のメイドたちは、手押し台車から飲み物や高級品だらけの軽食をテーブルに並べた後、すぐに退出していたからだ。
「ドーエンス殿、いまの私は一介の冒険者に過ぎないんだ。普通の応接室でも……」
「俺とお前の仲なんだ。これくらいの配慮は夫として当然のことだろう」
「……改めて言っておくが、私と貴方は婚姻関係どころか、婚約すらしていない」
「ふむ……こういうのもあれだが、俺は優良物件だと思うぞ? 俺と結婚すれば、もれなくその身分は国王夫人だ。そうなればこの国の権力はお前のものでもあり、お前を追い出した魔族国に復讐だって出来るんだぞ?」
「……私は別に、魔族国を滅ぼしたいわけじゃない。復讐も考えてはいない。それにそもそもが、追い出されたのは魔王城であって魔族国じゃない」
さらに細かく言うならば、私を直接的に追い出したのは新魔王なのだが、そこまで詳しくこの場で述べる必要性もないので、私はそれ以上は言わないことにした。
そうか、と黒エルフ王はひとつ頷く。
「だが、俺としては許せん気持ちでいっぱいなんだがな。あれだけ国の為に尽くしてきたお前を、弱体化したからというだけの理由で切り捨てるなど。夫として怒って当然だろう?」
「気持ちは在り難いが……というか、さりげなく”夫”を主張するのはそろそろ止めないか?」
「まあ、気にするな。外堀から埋めて既成事実を構築してるだけだからな」
「よくもまあ堂々と……」
まるで取り合わない黒エルフ王に、私は嘆息ひとつ。
そんな私の傍にはアテナが静かに控えているものの、彼女は両目を硬く閉じて外界からの情報をシャットアウトしていたりする。
黒エルフ王側に佇むデモナからの熱い視線が、鬱陶しかったようである。
しかしながら、両目を閉じたアテナの姿もが愛おしいようで、デモナはじーっと凝視していたが。
「そんなことよりも、だ。どうした? 食べないのか? お前のために急いで持って来させたんだ。遠慮なく飲み食いしてくれ」
「……眠り薬とか入っていないだろうな?」
「おお、そんな手があったか!」
「……勘弁してくれ」
「冗談だ。さすがにそんな卑劣な真似はしないさ、お前に嫌われては意味がないからな」
何も入っていないことを証明するように、黒エルフ王は自ら適当なお菓子を手に取り、頬張る。
さすがに一国の王に毒見をさせた以上、王の肩書きを失った私がこのまま食さなければ失礼に当たってしまうので、仕方なく、彼の言葉を信じて適当なお菓子を口の中へ。
「……うまいな」
「だろう? この王都でしか造られていない特産品だ」
「なるほどな」
身体に何の変調も感じられないので、警戒を解いた私はそのお菓子をさらに手にとり、再び咀嚼。
私の無警戒で食べる姿を嬉しそうに眺めた後、黒エルフ王は表情を真剣なものに変えてきた。
「実際のところ、お前には本気で俺の妻になってもらいたいと思っている」
「……私を利用して、”あの人”から権力を取り戻すためだろう?」
紅茶で喉を潤してから私が指摘すると、黒エルフ王は苦い顔になった。
「実質、この国の権力を握っているのは……母上だからな」
「王母レインクレイ」
私もが、苦々しい声でその名を呟く。
世界樹内で、あの黒エルフが今際の際に、途切れ途切れに呟いた名前である。
またの名を『毒婦』と、心の中で付け足しておく。
さすがに息子の前で、母親をあしざまにいうわけにはいかないので、表現を控えたのである。
とはいえ、その認識は私以外もが普通に抱いていることではあったが。
目的のためならば手段を問わない冷酷無比さに加え、天性の男たらしで種族を問わず数々の男を手玉に取り、篭絡し、前黒エルフ王もその中のひとりであり、彼女は王妃の座へと。
前王が存命中は王妃特権でやりたい放題をした上に、その手腕で権力を手中に収めており。
前王が亡くなり、それを期に息子だったドーエンスが新黒エルフ王に就任した後は、王母として表舞台からは去ったものの、彼女が築いた数々の悪評が世間から消えることはなかったのだ。
気まぐれで彼女にダンナや彼氏を寝取られた女たちは、しかしながら彼女に恨みを抱くことはなく。
男だけではなく女ですらが、性に奔放な彼女にとっては獲物なのである。
抗議に赴いた女たちは、一泊の後、翌日には彼女の虜となっていたのだ。
(男にしか興味がないドラギアのほうが、まだマシだな)
レインクレイ……王母であり毒婦。
そんな彼女には、未だに、黒い噂が絶えないのである。
アテナにあからさまな執着を見せていたデモナすらもが渋面をつくっており、ひとつ息を吐いた黒エルフ王が、改めて私を真っすぐに見つめてきた。
「利用という表現は的確じゃない。心底お前に惚れていることに変わりはないんだ。だが……お前が妻となれば、少しは──母上に逆らうことができるからな」
「利用ということに変わりないと思うがな?」
「クレアナード。言葉遊びで、俺をイジメないでくれ。俺のお前への想いが本物なのは、お前とて知っているだろう?」
「……さあな」
私は言葉を濁すことで応える。
結局のところ、利用したという意味においては、私も彼を責めることはできないのだ。
彼の好意を利用して、こうしてこの場にいるのだから。
「……ドーエンス殿」
「クレアナード。前みたく、呼び捨てで構わないんだが」
「さすがに、一国の王を呼び捨てにするわけには……」
「距離を感じて、寂しく思わされる。せめて、呼び捨てぐらいはしてくれ」
王というのは、一種の孤独感みたいなものがあったりする。
臣下が皆、距離を置いてくるからだ。
そしてドラギアもがそうであったように、かつての私にも、その孤独感には覚えがあったりする……
(それでも私とドラギアには救いはあったがな)
私にはアテナが、ドラギアにはレイがいた。
しかしながら、黒エルフ王とデモナには、私たちのような関係は構築できてはいないようである。
男と女の違い、というやつなのかもしれないが……
「…………わかった。では、ドーエンス。そろそろ本題に入ってもいいか?」
「ああ。元々そのつもりで、王都で活動していたのだろうからな」
やはり気づいていたか、と私は内心で彼を評価する。
性格にやや難があるものの、彼は決して無能な王ではないのである。
「さすがに、王がおいそれと王都を離れるわけにはいかんからな。いずれはそっちから王都に来るだろうと思い、ずっと待っていた。すぐに迎えを寄越せなかったのは、こちらも忙しい身でな。事情は察してくれ」
「なるほど。どこぞの王に聞かせてやりたいな」
冷やかしで王都を簡単に離れた王が脳裏を過り、私は苦笑い。
そして私は表情を真剣なものへと変え、単刀直入に本題に入った。
「世界樹の件、どこまで知っている?」
※ ※ ※
「やはり、その件だったか」
ドーエンスは予想していたようで、これといって驚いた様子も見せず、淡々と答えてきた。
「はっきり言おう。詳しいことは俺は知らん。公表されている以外のことは、耳に入ってこない」
「言い方を変えよう。何をどこまで知っている?」
「俺の口から言わせたいのだな?」
「ああ。貴方が嘘を言う人物じゃないのは知っているからな」
「おお……そう俺を評価してくれていたのか。だったら、俺がお前を愛しく思っていることも──」
「ドーエンス、いま真面目な話をしている時だ」
「……っ」
ジロリと私が睨んだことでドーエンスは顔をひきつらせた後、「こっちも、かなり真面目な話なんだがなぁ……」とぼそりと呟いてから。
「俺の耳に入っている情報は、性別は知らんが、黒エルフのひとりが世界樹の”核”を盗み出そうとして、その結果として世界樹が暴走したって程度だ」
「なるほど」
「国としての立場は、いち国民の罪を背負って法外な賠償金など支払えないということだ。だから個人の責任であり自業自得。国は一切関知しないというのが、わが国の方針だ」
「まあ、当然といえば当然の判断か」
そんなことをいちいちしていては、あっという間に国庫が破産してしまう。
「ドーエンス。今回の一件、お前ならばどう見る? いち個人の暴走か? あるいは──」
私が言うと、問われたドーエンスは意外な事に即答だった。
「恐らくは、母上の企みだろうな」
その声には迷いがなかった。
アテナをじーっと見ているデモナもピクンと眉根を動かしたが何も言わなかったのは、同感なのだろう。
そして口を挟むつもりはないようでアテナの視姦を再開し、外からの情報を遮断している彼女は無反応。
一拍間を置いてから、ドーエンスが根拠を述べてきた。
「白エルフの警備を掻い潜り、尚且つ世界樹内を単騎で突破するだけの実力がある人物。それほどの奴が、ただの盗みで行動を起こすとは思えない。結果的に白エルフ領に混乱を引き起こしたことを鑑みるに、白エルフを排除したがっている母上の仕業と考えるほうが、自然だろう」
「……かもしれないが、それを国王のお前が認めていいのか?」
「お前の前だからさ。国益や国同士の関係がさらに悪化することを、お前が安易にするわけないだろう?」
「まあ……確かに、な」
いくらドラギアから依頼を受けていたとはいえ、その結果が国同士の種族戦争に発展してしまいかねないのならば、さすがに報告は躊躇われてしまう。
私は破滅的思考の持ち主ではないのだから、多くの人間が命を失う事態を招くことを避けたいと思っても、別に不思議なことではないだろう。
「だがドーエンス。現状、何も証拠はないわけだが、もしそれが事実だった場合、さすがに無罪放免というわけにはいかないぞ? 今後また同じことをするかもしれないんだ。何かしらの対策を──」
私がそこまで言葉を述べたところで、いきなりドアが開けられたかと思うと、堂々とした足取りで入ってくる人物がいた。
「久しいではないか、クレアナード」
艶のある声で名前を言われた私は、緊張感を漲らせた。
スリットの入った煽情的なドレスをゆったりと纏い、上品ともいえるし下品ともいえる絶妙なバランスを誇る色香を放つ 妖艶な黒エルフの女。
煌びやかな装飾品はほとんど身に着けていないというのに、その全身からは優雅な高貴さ、あるいは清純さを醸し出しており、装飾品で誤魔化す必要がないほどに、彼女自身が一種のオーラを帯びていた。
そして、憂いたような気だるげな光が宿る双眸や、香水か体臭か鼻腔と脳髄をくすぐる甘い香りが、男のみならず同性すらが、欲情を誘われるのである。
これで成人している一児の母なのだから、本当に驚かされる。
「……レインクレイ殿」
「母上。なぜこちらに?」
私に名を呼ばれ、息子に問われた王母は、艶やかな微笑を浮かべてきた。
「何やらお前たちだけで睦言をしていると小耳に挟んだのでな。妾も混ぜてもらおうと思って来たぞ」
彼女はそう言いつつ歩き出し、私へと目を向けてくる。
「クレアナード、噂は聞いたぞ? 憔悴しているかと思ったが、なかなか元気そうではないか」
「……貴女も、壮健そうで何より」
「くくく。お世辞でも、もう少し心を込めてほしいな?」
彼女に追随するおとなしそうな侍女が持ってきた椅子に優雅に座り、私たちを見回した。
「ほれ、どうした? 妾に気にせずに続けてくれてよいぞ? 何を話していたかは知らんがな」
いきなり入ってきてこちらの話の腰を折っておきながらの、この堂々とした態度である。
むしろ清々しいとさえ言えるかもしれない。
「──っ」
王母の傍らにかしずく侍女が、声を押し殺して身を震わせた。
侍女の肩に腕を回した王母が、手慰みで彼女の胸を揉みしだいているのだ。
この凶行に、しかし侍女は嫌がるどころか恍惚な表情で小さく喘いでおり。
(相変わらず、か……)
私は内心で溜め息ひとつ。
まあ、気にしても仕方ないことなので、その行為については無視をする。
「レインクレイ殿。世界樹の一件は耳に入っていると思うんだが」
「噂程度ならばな。ドーエンスと同程度の情報しか、妾も知らんぞ?」
「……なるほど」
堂々とした態度からは、嘘を吐いているようにはまるで見えなかった。
本当に知らないのか、嘘を吐いているのか。
後者の場合は、かなりの役者だろう。
(証拠はないからな……)
だから私は、切り口を変えてみることにした。
「世界樹の暴走の件、貴女ならどうみる?」
「ふむ……まあ、不思議なことはないだろう。なにせ”核”を失ったのだからな。暴走して当たり前だと思うぞ」
「……どういう意味だ?」
「妾が調べ上げた結論から、世界樹とは精霊ではなく魔獣の一種なのだからな」
とんでもないことを言い出してきた。
目を閉じているアテナ以外、私を含むその場にいる全員が、驚愕に目を見開く。
そんな定説は聞いたことがなく、仮に事実だったならば、エルフ族は魔獣を信仰していたことになってしまう。
(おいおいおい……この女、何を言い出すんだ)
とは思うものの、こう見えて彼女、学者肌の一面もあったりするのだ。
ひとは見た目で判断してはいけないという、極めて稀有な例だろう。
眼鏡をかけながらも妖艶な態度で司書室で読書に耽る姿というのも、なかなか想像しづらいが。
「は、母上。どのような根拠があってそのような……」
「考えてみるが良い。そもそもが、精霊の老廃物が魔獣だという考え自体がおかしいということだ。人型の精霊が、老廃物で魔獣を生み出すのか? そんな話は聞いたことがない。それなのに、人型でない精霊は魔獣を生み出すようになるのか、という話だ」
アテナをちらりと見るが、当の彼女は両目を閉じたまま無反応。
学者の顔になっているレインクレイは、構わずに話を続ける。
「世界樹『ガイア』が精霊ではなく魔獣と仮説するならば、単に眷属を生み出しているだけに過ぎず、何も不思議なことはないのだよ。樹木型の魔獣が生み出されることもそれで説明がつくし、暴走の件も”核”が人間でいうところの脳みたいな働きを担っていたとすれば、納得もいく。これもまた、精霊にはない特徴だ。よって、世界樹だけが特殊な精霊なのではなく、魔獣だと仮定するほうがあらゆる面で納得できるのだよ」
「それはそうかもしれないが……あれが魔獣だと……? あんな巨大な魔獣が存在するというのか……?」
さすがに私も言葉がなかったが。
「にゃはは~! 『ガイア』は魔獣ってか魔物だよ~ン♪」
何の前触れもなく。
唐突に、浮遊するネミルが姿を現すのだった。
※ ※ ※
※ ※ ※
「では内通者の件、お任せします」
そう述べて、密偵少年──ダミアンは、マイアス宅を後にする。
彼から情報を得たマイアスとラーミアは、使用人抜きでふたりだけで、すぐに家中を捜索をする──
「まいったね。まさか、こんなに見つかるとは……」
「……信じられませんわね……」
テーブルの上に置かれているのは、盗聴器だった。
しかもその数は、全部で5個もあったのだ。
これらの盗聴器により、各街に配置していた密偵が”あちら”に特定されてしまったのだろう。
「いつの間に……というか、仕掛けられるのは、この屋敷で働いている使用人の誰かだろうけど……」
「あなた……寝室にも仕掛けられていたということは、もしかして……」
頬を紅潮させるラーミアの言わんとすることを察したマイアスは、静かに顔を横に振る。
「仕方ないさ。僕らは、盗聴器があるなんて知らなかったんだから」
「でも……っ」
「恥ずかしい気持ちはわかるけれど、いまは誰が内通者なのか特定しないといけない」
「……そうですわね。この恥辱と怒りを、その内通者にぶつけましょう!」
──内偵を進めた結果。
ひとりの掃除婦があぶり出される。
掃除と称してならばどの部屋にも入れるために、盗聴器も仕掛けやすかったのだろう。
なぜ裏切ったのか……理由は簡単だった。金に目がくらんだのである。
盗聴器を仕掛けるだけの簡単な作業で、この家での1年分の給料分が支払われるらしく、その掃除婦は、軽い気持ちで仕掛けたようだった。
涙ながらに罪を告白した彼女は、自分を買収した者の名を自白するも、恐らくはただの末端だろう。
トカゲの尻尾切りであり、本命にまでは、到達できないだろう。
「あの筋肉ダルマ……まさか、こんな絡め手を仕掛けてくるなんて……っ」
「僕も、油断していたとしか言えない」
「というか、むしろこんなことを発案したのは、側近のドバンかもしれませんわね」
筋肉ダルマの知恵袋を示唆すると、マイアスも同意だったらしく。
「こういうイヤらしい手は、確かにそうかもしれないね」
「ダミアンからの報告だと、まだお姉さまの居場所は特定できていないみたいですけど……」
「まだ彼らが義姉さんを始末しようとしていることは、今回の件で判明したからね。だから僕らも、今まで以上に警戒を強めないといけない」
「……どうしてそこまでお姉さまに固執するのかしら。もうお姉さまには、権力なんてないのに」
「僕らと同じように、失脚したいまでも義姉さんを支持する者は多いからね。そういう目障りな奴らを一掃するには、やっぱり義姉さんを始末したほうが早いんだと思うよ」
「お姉さま……」
敬愛する姉に想いを馳せてから、ラーミアは拳をぎゅっと握り締める。
「お姉さまの安全を考慮するなら、何もしないほうがいいのかもしれないですけど……でも。でも、やっぱりお姉さまがいま何をしているのか、元気なのか、知りたいですわ……」
「僕も同じ気持ちだよ。義姉さんの安否は把握しておきたいからね。いざという時、すぐに連絡をつけられるようにするためにもね」
「……これからどうしますの?」
「とりあえず、僕たち側の内通者は排除したし、また密偵を各地の街に配置しようと思う。それと……こっちからも、ブレア陣営に仕掛けようと思ってる」
「こっちから?」
「あっちの陣営に内通者を作るか、もしくは送り込む。いつまでも受け身じゃ、今回みたいなことが起きかねないからね」
「いよいよ、動くのですわね?」
「ああ。とはいっても、まだ内通者を作るレベル程度だけどね」
「私たちを怒らせたこと、あの筋肉ダルマたちに、身をもって教えてあげましょう!」
闘志をみなぎらせるラーミアを、マイアスは頼もし気な様子で見つめるのだった。
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