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未来の記憶

第53話

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 体育館の隅に座って、バスケの練習を見てた。

 放課後のこの時間に、この場所に来ることはあんまりなかった

 っていうか、多分ない。

 練習の邪魔になるだろうし、来てもすることはないし。

 詩穂と待ち合わせる時は、いつも体育館の外だった。


 …なんか、不思議な感覚だな


 みんな、昔と何も変わってない。

 女子バスケ部の中には、詩穂の他にも友達が何人かいた。

 後輩の松ちゃんと、テル子。

 文化祭で一緒に屋台を開いたんだよね。

 この頃はまだ、関わることがほとんどなかった。

 陸上をしてると横の繋がりがあんま無いというか、特に高跳びの競技なんかは、陸上の中でも孤立してて。

 高跳び専属でやる人なんて、東京でもあんまりいない。

 …いや、まあ、それは語弊があるかな

 私が知ってる高校では、「陸上競技部」っていう括りで活動してる人がほとんど。

 高跳びをやってる人ももちろんいる。

 だけど私みたいに、子供の頃からやってる人なんて滅多にいなかった。

 大抵“高校から始めました”とか、“興味を持ったから”とか、そんな感じ?

 
 塩見々浜高校は、それこそ高跳びをする人なんていなかった。

 この高校に入ったのは、たまたまこの学校に、高跳びで有名だった選手がコーチをしてたから。

 中学のインターハイでその先生とは知り合い、一緒に頑張ってみないか?と言われた。

 設備もいいし、練習環境なんかは近くの大学の施設を利用できる。

 自分で言うのもなんだけど、当時は期待されていた。

 女子中学の日本記録に迫った中3の頃。

 いつかオリンピックの舞台に立ちたいって、思ってた。

 今となってはいい思い出だ。

 子供だったからさ?

 全部うまく行くと思ってたんだ。

 東京暮らしもいいかもって、変な妄想も膨らませて。
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