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かつての夢
第17話
しおりを挟む1m80cmのバー。
いつからか、飛ぶイメージができなくなってしまっていた。
グラウンドに帰ることもなくなっていた。
いつかは飛べる。
そう思う自分が、かつてはいた。
初めて1m60cmを飛べた時、何もかもが順調に思えた。
踏み出す足の位置も、ジャンプ前のイメージも。
走り高跳びでもっとも基本となる動作は、助走前の距離感だ。
爆発的な力を一点に集中させるためには、バーまでの距離を頭の中に刷り込んでおかなければいけない。
バーの手前、——つまり、スピードが乗った頂点に足を踏みしめるには、立ち止まることを考えちゃいけない。
イメージは“鳥”だった。
地上から飛び立つ前の鳥。
翼も羽も持っていないけど、まっすぐ向かうべきラインが、バーと地面を結ぶ直線上にあると思った。
垂直方向への力と、バークリアランスのための回転力。
その、——中心に。
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