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100億光年の時の彼方で

第349話

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 ◇◇◇



 ……

 ………

 …………チチチ





 ガンッ!



 「おい、亮平!」


 窓の外で声がする。

 何事かと思いながら窓を開ける。

 網戸の隙間から風が入ってきた。

 朝の涼しい風だ。

 枕元にあるラジオから朝の番組が流れている。

 最近よく聴いてるんだ。

 番組のタイトルは確か、…えーーっと


 「この寝ぼすけが!」

 「起きとるやろ!?」


 千冬のいる世界に戻ってきてから、一週間が過ぎた。

 千冬は相変わらず元気だ。

 元気を通り越してうるさい。

 眠たい朝が、吹き飛んでしまうくらいに。


 「はよ準備せえ」

 「わかっとる」


 ここ最近はずっと忙しい。

 とくに朝が。

 戻ってきた初日からずっと起こされてた。

 7時前には。


 急いで身支度を整える。

 忙しいもんだからパンしか食えない。

 昨日もコンビニで調達してきた。

 バナナじゃ、腹の足しになんねーから。


 玄関のドアを開けると、自転車にまたがりながら、千冬はスマホをいじってた。

 階段の方で音がする。

 どうやら夏樹が起きたみたいだ。

 これから支度するんだろう。


 「おはー」

 「冷蔵庫空いとるぞ。ちゃんと閉めぇ」

 「うい」


 パンにバターを塗ってると、千冬が中に入ってきた。

 ポケットに手を入れながら、カロリーメイトを口にかじり。


 「たまには私より早く準備しとけや」

 「無理…」


 7時前に起きるとか、どこの住職ですか?

 俺には俺のペースってもんがあるんだよ。

 朝練に行かないといけないのはわかるけど


 「兄ちゃん今日一回帰ってくるん?」

 「多分帰らん」


 今日は花火大会がある。

 神戸みなとみらい花火大会。

 本当は9月14日に上がる予定だったが、こっちの世界では台風の影響で9月21日に延期されてた。

 夏樹も見にいく。

 だから今日の晩メシのことを聞いてきたんだろう。

 洗濯物とか風呂掃除のことも含めて。


 「おかんに伝えとるし、大丈夫やろ」

 「わかった」


 花火…か。

 まさかこっちの世界で、もう一度見れるとは思わなかった。

 厳密には同じじゃないんだろうけど、細かいことはいい。

 もう一度見れるってことで、この際誘おうかと思ってた。

 花火を一緒に見るのは久しぶりだったから。

 一緒に屋台を回って、俺たちだけが知ってる穴場で、この夏最後の花火を見よう。

 その、予定だったんだが…



 「準備できた?」

 「おう」


 一週間この世界を過ごして、だんだん分かってきたことがある。

 神戸高の学校生活と、野球部のメンバー。

 まだわからないことがたくさんあるが、それでも、少しずつ。
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