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トンネルの向こう
第325話
しおりを挟む「誰かの「体」と「魂」が切り離されたら、あんたはそれを「人間」やと思うか?」
「体と、魂…?よくわからんが、多分…」
「なんでそう思う?」
「なんで…って、別に深い意味はないけど」
「ほんならどっちが人間?体と魂と」
「は?…別々になったってこと?」
「そういうこと」
「…しいて言うなら、魂?」
「なんで?」
「体にはなんも入ってないってことやろ?せやったら、魂の方が近いんちゃうん?」
ごめん。
自分で言っててよくわからん。
別々ってなんだよ…
でも、そういうことだろ?
体と魂が違うところにあるなら、魂の方が重要なんじゃね?
体はだってほら、ただの入れ物なわけだし。
「本来人間には、体と魂なんてものは無いんや」
「へ?」
「心と体ってよく聞かん?でも、そんなものはどこにもない。心と体は1つで、それを区分する境界はない。意味わかる?」
「…全然」
「キャンバスに描いた「絵」は、絵の具が「絵」か?それともキャンバスか?」
「どっちかってことはないやろ」
「やろ?その発想や。「人間」っていう事象を決定付けとるのは、たった一つの要素やない。私たちは常に不完全や。数式上も、物理法則上も」
「やろ?って言われても…」
「未来では、人造人間が生み出せるんやないか?って言われとった」
「人造人間!?」
「“サイボーグ”とはちょっとちゃうで?人工知能って聞いたことないか?」
「ある…けど」
「肉体は人間のままで、それを制御しとるのが機械やとしたら?」
「つまり…?」
「それは人間か?」
「…いや」
「ほんなら人間は?どっからどこまでがそうなんや?」
どっからどこまでが…?
そんなの考えたこともない。
少なくとも、その人工なんちゃらっていうのは人間じゃない。
肉体は人間だって言うけど、頭の中を乗っ取られてるってことだろ?
だとしたらそれは人間じゃない別の何かで、“作り物”っていうか…
「さっきのお姉さんは人間に見えた?」
「当たり前や」
「あの人が人造人間やとしたら?」
………は?
何言ってんだお前。
もしそうだとしたらやばすぎんだろ。
「冗談も大概にせぇ」
「冗談とちゃう」
「ハハッ。人造人間って、お前さぁ…」
「あとで証拠見せたるわ。直接見んとわからんやろうし」
「何を見せてくれるん?」
「お姉さんの「中」に入っとるもの」
……いやいやいや
見せるって言ったってだな。
「人造人間」だぞ!?
…え、まじで言ってる??
いや、そんなわけが…
「まあ、人造人間って言うても、あんたが想像しとるもんとはちょっと違うかもしれんけど」
「あり得んやろ…」
「なにが?」
「そんなアホなことがあるわけない。だって、さっきの人は…」
お姉さんはどっからどう見ても人間だった。
「人間」って改めて言ってる自分がおかしくなりそうなくらい。
「中」に入ってるもの…?
中は機械だっていうのか?
それとも、チップが頭に?
いやいやいやいや
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