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トンネルの向こう

第318話

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 貨物船の汽笛音が聞こえる。

 ボォーーーンという低い音と、港の工場から立ち昇る煙。

 ガソリンスタンドの中で、農機具やらなんやら積まれた軽トラックが洗車してた。

 フロントガラスにぶつかった水が弾けながら、涼しい空気を連れてくる。

 ジュースでも買おっかな…

 喉渇いたし


 「さあ、どうやって行くでしょう」

 「わからんから聞いとんやろが」

 「少しは自分で考えぇや」


 ぬっ…

 まるで俺がなにも考えてないような口ぶりだな。

 言っとくが、頭が痛くなるくらい考えたっつーの。

 今回の件だけじゃなくて、他にも色々。


 「行こうと思えばどこからでも行ける」

 「どこからでも!?」

 「そのかわり、“イメージ”が必要や」

 「イメージ?」

 「信じる力ってやつや」


 …ふざけてないよな?

 いやまあ、人が真面目に話してるんだから、そんなワケないか

 ハハ。


 「なんでも気合いって言うやろ?」

 「おい」

 「「ん」やないわ。真面目に話せや」


 ふざけてんじゃねーか。

 やっぱり。

 真面目に考えてる俺がバカだった。

 ほんと、ろくでもねーなコイツ。


 「気合い入れたら行けるってか?」

 「うん」

 「嘘つけ!」

 「ほんまやって」


 じゃあそれを証明してみろよ。

 気合いならいくらでも入れてやる。

 俺はいつでも準備OKだぞ?


 「ちゃんと伝えられるんか?」

 「え?」

 「自分の気持ちを」


 んー…っと。

 その話は、一旦置いといてくれないか?

 誰かに告ったことなんてないし、第一なんて言えば…


 「自分の気持ちを伝えたらええやん」

 「そうは言ってもやな…」


 なんで告る前提になってんだよ…

 昨日からずっと、あのことについてを考えてた。

 『結婚』

 女の口から聞こえてきた、衝撃的な2文字。

 理解の追いつかない、パワーワードを。

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