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夏の花火

第297話

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 「その“当たり前”の話が、当たり前や無くなったとしたら、どうする?」

 「…当たり前じゃなくなる?」

 「過去も未来と同じように、常に“変化”しとるとしたら?」


 未来と同じように…?


 ………

 …………

 ………………いやいやいや、あり得ないだろ


 もし過去が変化してたら、俺が昨日何してたのかも変わる…ってことだろ?

 合ってるよな?


 「そうそう」

 「…いやいや、んなわけないやろ」


 さすがにそこまでバカじゃない。

 過去は変わらない。

 つーか、それってさっきも言ったよな?

 変えられるもんなら変えたいぐらいなんだ。

 時間を巻き戻してでも。


 「起きたことは変えられん。けどそれはあくまで、“すでに起こったことに対する意味合い”に過ぎん。すでに起きたことやなく、起きる前の時間に目をあててみ?」

 「起きる前?」

 「あんたが昨日焼きそばを食ってなかったら?寝坊しとったら?」

 「しとったら…って、しとらんし」

 「もしもの話や」

 「そりゃ、その時はその時で」

 「それが現実に起きるとしたら?」


 現実に…?

 どういうことだ?

 そんなこと起こるわけないし、起こりようがない。

 もしかして、タイムスリップできるって言いたいのか?

 いやいや、まさかね…


 「過去の出来事が、水のように“形を持たない”って仮定してみて」

 「水のように…」

 「掬っても掬っても、バシャバシャと形を変える。水は、決まった形を持たない。そのイメージは?」

 「なんとなく…」

 「過去も未来も、1つの「時間」のプールの中に混ざり合っとるんや。過去は過去、未来は未来、そうやって私たちは、時間と時間の間に境界をつける。せやけど、その境界は元々どこにも存在しとらん。決まった「1つの過去」だけが、永久に静止するということはない。ストップウォッチのボタンを押して、時間が流れていくように」

 「は!?」

 「“世界線=並行世界”っていうのは、いわば海みたいなもんなんや。水平線の向こうまで波が広がるように、常に動き続けながら、形を変えていく」

 「形を変える…っつーのは?」

 「四角にも丸にもなれるっていう意味や」


 四角にも丸にも…

 言ってることはわかるが、それが一体なんだって話ではある。

 だってそうだろ?

 お前の話だと、いくらでも過去を変えられるって感じだよな?

 …え、そういうことだろ…?


 「間違ってはない」

 「そんなアホな話があるわけ…」

 「でも事実そうや。その気になれば、いくらでも人生をやり直すことができる」

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