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夢が覚めないうちに

第269話

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 ————————————ゴッ…!



 外に放出される力が、地上のもっとも低いところで弾ける。


 “爆風”が、全ての空間を包み込む。


 粉々に砕けた地面と、空中の境目。

 そこに一筋の光が見えた。

 それは雷鳴のように明るく、そして、——疾かった。

 目では捉えきれないほどの速度が、地上と空の境界に駆け走る。

 時間の流れそのものが変わる。

 そんな急激なエネルギーの膨張が、光さえも取り込みながら膨れ上がった。

 ——どこまでも、急速に。



 ドーーーーーーーーーーォォォォォォ……



 瓦解していく音。

 千切れていく世界。

 爆風が皮膚の表面を焼く。

 声を上げる間もなかった。

 痛みもなかった。

 …ただ、体の芯が爛れるような熱さを感じて、息もつけない息苦しさが、肺の中に入り込んできた。


 熱い…!

 苦しい…!


 その意識はずっと深いところに沈み込みながら、それでも、目前の爆発を捉え続けられるほどには、はっきりとした質感を残していた。

 指先の感覚はもう無い。

 毛髪の一本も残らないような“熱”が、神経の壁を越えてやってくる。

 巨大な隕石は、世界の中心で煌めいていた。

 1秒にも満たない一瞬への内側に、その立体的な衝撃波を広げていた。

 そして——


 落下した隕石の中心から、一気に力が伝っていく。

 その方向は無差別だった。

 あらゆる方向に進みながら、全てを薙ぎ払う。

 爆風に押し出され、もう、身動きは取れなかった。

 手足の感覚が無くなる。

 喉が焼け爛れたように、声が出ない。

 息が続くか続かないかの間際だった。

 視界の全部が、——暗闇に包まれたのは……



 
 ………………………………………

 …………………………

 ………………

 ………



 …一体なんだ…?

 …何が起こった?




 落下してくる隕石も、崩れ落ちた街と、……地面も。



 …千冬


 …なあ………千冬……


 ……そこにいるんだろ?


 ……この世界の、この地上のどこかに、まだ……



 …………

 ……


 …わからない


 …何が起こってるのか

 …なにが、起きたのか…




 遠い意識の向こうで、金属の擦れる音がする。


 気がつくとそこは電車の中だった。

 JR阪神線の上りと、須磨高の制服。

 吊り革に手をかけながら、窓の外では流れていく海の景色が見えた。

 揺れる電車と、午後の夕日。

 そのそばで、女は俺の手を握ってた。

 耳の奥に触れる優しい声が、——聞こえて




 「目が覚めた?」
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