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俗に言うアレ

第216話

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 「友達がおるんやろ?」

 「…たぶん」

 「めっちゃ自信なさげやん」

 「よくわからんのや。連絡も取れん状況やし」

 「連絡先は?」

 「スマホに載っとらん」

 「1人も?」

 「…うん」



 こんなことなら、暗記しときゃよかった。

 ラインのニックネームくらいはすぐに思い出せるけど、いかんせん、電話番号とかはなぁ

 探すのは探した。

 色々試しながら。

 でもいない。

 大ちゃんはもちろん、他の奴らも。

 野球部のアイツらとは、この世界で友達じゃない。

 そんなこと、普通じゃ想像できない。

 通ってる高校が違うんだから、知り合ってすらいないんじゃないか?

 そんなふうに考えても、実感なんて持てるわけなかった。

 だって、あり得なくね??

 “知り合ってすらいない”ってなんだよ。

 時間が巻き戻ってるわけじゃあるまいし…


 「須磨高の生徒やって言ってたよね?」

 「うん」

 「それ、どういう状況なん?」


 それは、こっちが聞きたい。

 それがわかったら苦労しないって。

 状況的に、“世界が変わった”としか言いようがないんだ。

 それ以外に説明できることが無いというか。


 「目が覚めたら、“世界が変わってた”、…か」

 「無理に考えんでもええで?」

 「その「楓」っていう子は、「未来から来た」って言ってたんよね?」

 「…ああ、うん」

 「仮にその子が未来から来てて、「超能力」か何かで亮平君をここに連れてきたとして、その“目的”は?」


 目的?

 だからそれは、“千冬を助ける”っていう


 「やっぱり、亮平君はちーちゃんのことが好きなんやね」

 「…なっ」


 違う。

 違わないけど、思わずそう言いそうになった。

 それはたぶん、千冬に対する気持ちが、まだうまく整理できていないからだ。

 好きだけど、そうじゃない。

 …なんて言えばいいかな。

 恋愛感情として好きだとか、友達として好きだとか、「好き」にも、色々種類があると思う。

 うまくは言えないけどさ、俺はずっと、千冬の背中を追ってきたんだ。

 それがいつからか、思い出すのも難しいくらい。

 とりあえず、単純にまとめたくないんだ。

 好きとか嫌いとか、そんな単純な感情なんかで、ひとまとめに出来るようなやつじゃないから。


 「告白はせんの?」

 「そんなんちゃうって」
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