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夕暮れと影

第146話

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 「もしもし」

 「あ、さや姉!」

 「どしたん?」

 「どしたもこうもないわ!千冬がおらんのや!!」

 「はぁ??」

 「今、病院におるんやけど、入院履歴にも残っとらんって…」

 「病院!!?」

 「ちょっと!!貸しぃ!」


 スマホを無理やり取り上げられ、強い口調で睨まれた。

 返せと言ってもダメだった。

 静かにしろと指を立てられ、強めのジェスチャーをしてくる。


 「もしもしさや姉?亮平が今ちょっとおかしいねん!電話切るで?」


 強制的に電話を切られた。

 取り返そうとしたが、手を後ろに回されてしまった。

 急いで確認したいってのに…


 「返せや!」

 「あかん!何やっとんねんさっきから!」

 「ここにおるはずなんや!」

 「せやから、誰が!?」

 「千冬が…」

 「私はここにおるやんけ!!」


 …言ってる意味がわからない。

 目の前の女子高生が、…千冬?


 いやいやいやいや

 …そんなバカなことが


 腕についた傷跡。

 同姓同名の文字。


 “彼女”が誰かを、俺は知らない。

 「千冬」だって言われても、…そんなの、信じられるわけないだろ

 彼女は俺の言葉を遮るように、「冷静になれ」とか「落ち着け」とか、意味のわからないことばかり。

 冷静になってほしいのはこっちの方だ。

 とんでもないことが起きてんだって!

 落ち着けるわけないし、まじで千冬はどこに…
 
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