上 下
142 / 394
ここは…?

第140話

しおりを挟む

 「ちょっ、怖いって!」


 やっぱり、…ある


 …でも、なんで?


 呆気に取られたまま、彼女を見た。

 透き通った肌。

 ふんわり柔らかい、ボーイッシュな髪型。

 目の前の女子高生が誰かを、必死で理解しようとした。

 だけど、そんなはずが…


 「千冬…なのか?」


 その言葉が何を意味するかを理解できないまま、勢いのままにぶつけた。

 気がついたら外に出てた。

 「千冬」って、その“名前“が。


 彼女は不気味そうに俺の方を見た。

 顔が引きつってるようにも見えた。

 でも、訳がわからないのはこっちの方なんだ。

 そんな顔をされても困るし、なんなら、今すぐに説明してほしいくらいだった。

 ”説明”っていうか、状況の整理というか。


 「そうやけど」と、素っ気なく言ってきた。

 だからもう一度尋ねた。

 “本当に千冬なのか”、と。

 彼女はただ頷いて、それがどうかしたのか?と聞いてきた。

 …どうもこうも、そんな嘘みたいなことが…


 「証拠は?」

 「証拠ぉ!?」


 びっくりした声をして、彼女はさらに後退る。

 証拠というかなんというか、とにかく信じられなかった。

 だから、尋ねるしかなかったんだ。

 彼女が“誰”で、何者であるかを。


 考え込んだように腕を組み、俺を一瞥して、「ふざけてる?」と神妙な面持ちで聞いてきた。

 ふざけてない。

 一切。

 むしろ、それはこっちのセリフだと言いたかった。

 そんなわけないと首を振ると、しつこいくらいに突っ込んできた。


 「じゃあなんやねん」

 「…真剣に聞いとんやけど?」

 「記憶喪失にでもなったんか」

 「そんなわけないやろ」

 「さっきまで普通に会話しとったやんけ。怖いであんた」

 「…さっきまで?」

 「大体、練習しようって言ってきたのはあんたなんやし」

 「練習?」

 「打撃練習や!フォーム確かめたいって言うたやんけ」

 「…???」


 打撃練習?

 フォーム??


 やばい、ますますわからない。

 だって俺はさっきまで女といたんだ。

 電車に乗って、目を瞑ってとか言われて…

 何をどう説明すればいいかも分からず、彼女が話す内容についてすらいけずにいると、しまいに大きなため息をつかれた。

 ハァッ、と、呆れ顔をされたまま、もうええから行くでと、強制的に会話を切り上げられ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

the She

ハヤミ
青春
思い付きの鋏と女の子たちです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

アルファポリスで書籍化されるには

日下奈緒
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスで作品を発表してから、1年。 最初は、見よう見まねで作品を発表していたけれど、最近は楽しくなってきました。 あー、書籍化されたい。

処理中です...