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ここは…?
第139話
しおりを挟む「桐崎…千冬…?」
ほとんど無我夢中で、その名前を口にした。
彼女に問い質したかったわけじゃない。
…いや、厳密に言えば確かめたかった。
それは事実だ。
だけどそれ以上に心の中で感じてたのは、今、“何が起こってる“かの直接的な困惑だった。
そう考えるより他になかった。
”考える”というよりも、引っ張られるという感覚の方が近かった。
ほとんど無理やり動かされてるような感覚だった。
それぐらい、何もかもがぐちゃぐちゃだった。
「ほんまにどないしたん?」
噴水前のベンチに座らされ、おでこに手を当てられる。
熱があるのかどうか確かめられてるようだが、生憎、体調は悪くない。
頭痛もしないし、目眩だってない。
何度も言うが、おかしいのは俺の方なんかじゃない。
…絶対に
「…ちょっと手ェ貸してくれるか」
「…は?手?」
「ああ」
もしも彼女が千冬だって言うんなら、子供の頃についた傷があるはずだ。
差し出された左手を持って、袖を捲った。
自転車で転けた時の傷。
小石で擦りむいた、大きな切り傷。
「なな、なんや急に!」
…ある
一瞬目を疑った。
それがあの“傷”かどうかはわからなかったが、同じ場所、同じ形で、擦りむいた跡が残っていた。
彼女はすぐに手を引っ込めた。
気恥ずかしそうに、勢いよく後退り。
俺はもう一度その傷跡を見たかった。
だからすぐに立ち上がって、遠ざかる彼女の左手を掴んだんだ。
もう一度、近くで…
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