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ライバル

第114話

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 千冬だって例外じゃない。

 きっとアイツも高校生になれば、嫌でもわかっただろう。

 スピードもパワーも、大人に近づくほど差が開く。

 まだ、男と差がなかった小学生の頃だったから、夢を追いかけられてたんだ。

 甲子園に行きたいと言う気持ちも、豪速球を投げたいという想いも。


 でも女は言うんだ。

 千冬は未来では、“プロ野球選手を本気で目指してた”って。

 そんなバカなって思った。

 だって「プロ野球選手」だぞ!?

 確かにアイツは、いつも遠い景色を見てた。

 いつだって勝ち気で、いつか海の向こうまで行くんだ、って、わけわかんないこと言ってさ。

 でもそれは、俺たちがまだ子供だったからで…


 「亮平!ブルペン行くぞ!」


 守備練がひと段落して、女は俺を呼んだ。

 まだティーバッティングの最中だってのに。


 「俺は認めとらんからな」


 エースがどうのってよりも、まずコイツがチームの一員だってのが納得できない。

 100歩譲って、入部するのは別に構わない。

 けど、なにが“甲子園を目指す”だよ。

 朝練だって無理やり連れてこられてはいるが、ぶっちゃけ明日からでも辞めたい。

 朝練のせいで授業中に寝てしまうことも増えた。

 前はそんなことなかった。

 どんだけつまらない授業でも、友達と喋るくらいの余裕があったし。
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