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嘘だろ!?

第88話

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 ザァァァァァァァァ……ッ



 女が何かを言いかけた途端、急に世界が動き始めた。

 宙に止まっていた雨粒はその勢いを取り戻し、重力の奔流の中に立ち戻る。

 水飛沫を上げる波音。

 バシャバシャと鳴り響く、世界の重力圏。
 


 女は地面にしゃがみ込んだ。

 そうして強く胸を押さえていた。

 ゴホッ、ゴホッ…!

 と咳き込みながら。


 「大丈夫か?」

 「…あ、ああ。なんとかな。力を使いすぎるとこうなるんや」


 「力」って、…なんだよ

 考えても埒が明かなかったので、女を背負って自転車まで戻った。

 雨が次第に強くなり、体中が冷たい。

 今起こったことがなんなのかを、冷静に処理できるだけの時間はなかった。

 とにかく、家に帰って、飲むもの飲んで落ち着こう。

 そう思いながら自転車を漕いだ。

 帰りの道中に女は喋らなかった。

 見た感じ、かなり疲弊している。

 肩から息を吸ってた。

 しゃがみ込んだ時には、100mを走り切った後みたいに疲れてた。

 なんでそうなったのかはよくわからない。

 とりあえず、がちでしんどそうだった。

 

 自転車を漕いでいる途中でも、夢じゃないかと思う時が何度かあった。

 でも、そうじゃないみたいだ。

 家に着いたのは18時を過ぎた頃だった。

 到着するなり女は服を脱ぎ、シャワーを浴びに行った。

 
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