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嘘だろ!?

第86話

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 「無駄や。それはエコーに過ぎん。失われた時の流れの中の、ほんの些細な」


 千冬!って叫んでも、返事はなかった。

 海の前で立ち止まったまま、停止した世界の一部の中に溶け込んでいた。

 ——なんで?

 どれだけ手を伸ばしても届かない。

 どれだけ近づいても近づけない。

 そんな感覚がすぐ隣を通り過ぎるのは、気のせい…?

 俺は夢中で呼び続けた。

 それしかないと思った。

 それしか…考えられなかった。


 「無駄って言うとるやろ」

 「せやけど、目の前におるんや!…アイツが!千冬が!」


 必死に触れようとする俺の手を掴み、女は毅然とした態度を取ってくる。

 なんでここに千冬がいるんだ…?

 なんであの頃の姿をした彼女が、この場所に立ってるんだ?

 わけもわからずに視線を向けた。

 ほとんど、何も考えられなかった。


 「私は、“すべての時間”に関与することができる。せやから、こうして自由に歩くことができるんや。「時間」と「時間」の境界を」

 「そんな意味わからんこと言われてもわからんわ…!なんやねんこれは!?」

 「千冬とあんたは、ともに未来を歩くことができない。それは“運命”やった」

 「 …何を、…言って」

 

 
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