上 下
45 / 394
甲子園

第43話

しおりを挟む

 「あんたにはわかるやろ?キーちゃんの気持ちが」

 「わかったところで、なんになるんや?」


 アイツの夢は、誰にも負けないくらいでかかった。

 人一倍負けず嫌いで、やると決めたらとことんやる。

 それが、アイツの性分だった。

 何かと戦おうとしてたのは。


 …でも

 でも、もう、届かないんだよ。

 アイツの夢も、夏も。

 俺が代わりに行ってやるって思った。

 だけど同時に、それがなんになるんだ?って思う時があった。

 千冬が目を覚ますならなんだってする。

 アイツが望むことなら、俺はなんだって…


 「考えんな」

 「あ?」

 「考えたってわけわからんやろ。せやから考えんな」


 そんなこと言ってもだな…

 大体、お前は何がしたいんだ?

 こんなところに連れてきて、昔話に花を咲かせて。

 ここに来たって、俺たちは何もできないんだ。

 声だって、届かない。

 わかるだろ?


 「キーちゃんは今でも戦っとるんや。私らが立ち上がらんでどうする?」

 「戦ってるって…、どう言う意味や?」

 「見てわからんのか?キーちゃんは生きとる」

 「…それが?」

 「あんた言っとったやないか。“モタモタしとると追い抜くで”って」


 …懐かしいな

 でも、それが?

 今さらそんな言葉、なんの役にも立たない。

 …そりゃ、時々思い出したりはするけど
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

小学生をもう一度

廣瀬純一
青春
大学生の松岡翔太が小学生の女の子の松岡翔子になって二度目の人生を始める話

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

the She

ハヤミ
青春
思い付きの鋏と女の子たちです。

大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話

家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。 高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。 全く勝ち目がないこの恋。 潔く諦めることにした。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

体育座りでスカートを汚してしまったあの日々

yoshieeesan
現代文学
学生時代にやたらとさせられた体育座りですが、女性からすると服が汚れた嫌な思い出が多いです。そういった短編小説を書いていきます。

道化師と毒舌女の学園録

ソリティア
青春
人の心を読める異能持った少年黄泉嶋悟、彼は自分の能力を使いクラスの人気を勝ち得ていた。そんな悟のところに担任から飼育委員になることを頼まれる。その相方は、成績、運動、容姿、全てが学年1位と言わている姫条高嶺であった。そうして2人は出会い物語が始まっていくのであった

処理中です...