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甲子園

第40話

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 いつもやかましくて、向こう見ずで、そのくせ不器用で。

 冗談ばっかり言うへんな奴だと、思ってた。

 子供の頃はとくに。


 でも今は違うんだ。

 アイツは、俺の中でヒーローなんだ。

 どんな戦隊モノも敵わない。

 まるでアニメの主人公みたいだった。

 試合に負けそうになっても、なんとかなると思ってた。

 ただ、ミットを構えてれば、それだけで。



 ガチャ…



 この場所に来るたびにいつも思う。

 どうして目を覚まさないんだ?

 どうして、返事をしてくれないんだ?

 いつも俺の前を走ってたのに、今じゃ、立ち上がる素振りさえなくて。



 「キーちゃん、久しぶり」



 女は千冬の顔を見るなり、やさしい声で挨拶を交わした。

 ベットの横にある丸椅子に腰かけ、手を握る。

 千冬は返事をしない。

 それはいつものことだ。

 …きっと、それは永遠なんだと思う。

 これから先、ずっと、千冬が世界に戻ってくることはない。

 俺にはわかってた。

 どう足掻いたって、もうどうしようもないことを。

 
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