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いや、ちがう、そうじゃない
第22話
しおりを挟むガチャッ
ジェスチャーも交えながら全力で説明している横で、ジャージに着替えた女が台所に帰ってきた。
髪を濡らしたまま。
「コイツだコイツ!」
「ああ、いらっしゃい!」
…いらっしゃい…?
もしもし?
おかん?
(あんた、中々美人な子連れてきとるやないの)
小声でそう言ってきた。
…バカなのか?
ひょっとして、バカなのか?
連れてきたんじゃなくてコイツが勝手に上がったの!
わかりますか言ってること。
「そんな気にせんでもええのに。あんたももう高1なんやから」
…なにを言ってるんだ?
女といいおかんといい、ここにはバカしかいないのか?
おい!
お前がなんとか説明しろよ!
「…すいません勝手に上がりこんじゃって。亮平君がいいって言うから」
…
……
…おいおいおいおい
なにを言ってる
おかんを見ると妙に得心顔を浮かべている。
…まさかとは思うが、信じてるわけじゃないよな?
「ええんやでそんな気ぃ使わんでも。シャワーでもなんでも浴びてくれたら」
「ありがとうございます!!」
…なにそんな急に礼儀正しくなってんだ。
「ありがとうございます」じゃない。
初対面なんだぞ!?
コイツとは!
「あんた彼女できたんなら、できたって言いんさいや」
彼女じゃない!!
名前すら知らないっつーの!
「まだ、亮平君から聞いてなかったんですか?」
「聞いてないで」
…はあ?
ってか、今、俺の名前言ってなかった?
色々パニクりすぎて聞き逃しそうになったが、確かに言ったよな…?
コイツに喋った記憶ないんだが…
「せっかく家に来てくれとんやから、しっかりもてなしんさいや!ほら、ボケっとしとらんと!」
ちがーーう!
「客」じゃない!!
犯罪者だっつってんだろ!!
説明するも、おかんは聞く耳を持ってくれなかった。
そうこうしているうちに茶菓子まで出し始め、カフェオレまで作って出したりといたせりつくせりだ。
呆れて物も言えなかった。
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