山と海と空と果てと



あの日、僕は山にいた。

大好きだったお婆ちゃんが、行方不明になった日に。



高校を卒業して、家を継ぐことになった木下ユウスケ。

彼は学生時代に、いじめられた過去を持っていた。

人と馴染めない日々。

バラバラになった家族。

そんな彼の元に、1通の手紙が届く。

遠方に住んでいる祖母からだった。

『もし貴方が良ければ、いつでも遊びに来なさい』

住む場所も、行くあてもなく、祖母の家に足を運んだ彼は、それから10年間、彼女の家に住むことになった。

生きるとはどういうことか、夢を持つとはどういうことか、祖母は教えてくれた。

いつか、家族と、——みんなと笑い合える日々を取り戻したい。


彼女はいつも願っていた。

山の麓にある海の店。

かつて家族と共に過ごしていた小さな店に、海で溺れた娘がいたこと。

あの日の出来事を変えることができないとしても、前を向こう。

あの子の分まで笑っていよう。

——そう、口ずさんで。
24h.ポイント 0pt
0
小説 192,243 位 / 192,243件 現代文学 8,171 位 / 8,171件

あなたにおすすめの小説

ケントローフの戦い

巳鷹田 葛峯
現代文学
始まりはあの日であった。 ハブロン曹長率いる国軍と、クロマニエ氏の戦いの記録。

花が冷かる夜に

夢ノ瀬 日和
現代文学
『花が冷かる夜に』(ハナがヒかるヨに) 大切な人と過ごすクリスマスも、 独りで過ごすクリスマスも、 みんな平等に幸せな希跡が起きますように。 みなさん、冷えにはご注意を。

おばあちゃんの湯呑茶碗

興梠司
現代文学
おばあちゃんが大事にしていた湯のみ茶碗 その湯のみ茶碗にはいろんな思い出が詰まっていた

神様の贈り物

紫 李鳥
現代文学
希望を失った女に与えた、神様の贈り物とは……

彼女にも愛する人がいた

まるまる⭐️
恋愛
既に冷たくなった王妃を見つけたのは、彼女に食事を運んで来た侍女だった。 「宮廷医の見立てでは、王妃様の死因は餓死。然も彼が言うには、王妃様は亡くなってから既に2、3日は経過しているだろうとの事でした」 そう宰相から報告を受けた俺は、自分の耳を疑った。 餓死だと? この王宮で?  彼女は俺の従兄妹で隣国ジルハイムの王女だ。 俺の背中を嫌な汗が流れた。 では、亡くなってから今日まで、彼女がいない事に誰も気付きもしなかったと言うのか…? そんな馬鹿な…。信じられなかった。 だがそんな俺を他所に宰相は更に告げる。 「亡くなった王妃様は陛下の子を懐妊されておりました」と…。 彼女がこの国へ嫁いで来て2年。漸く子が出来た事をこんな形で知るなんて…。 俺はその報告に愕然とした。

好きになんて、ならなければ良かった〖完結〗

華周夏
現代文学
努力し、出世を重ねていった三輪。彼との溝は深まっていく。『氷雨と猫と君』の原案になる作品です。

私は体を売ることをやめない

興梠司
現代文学
私にはなにもない 学力もなにも 私の売り物は体だけ

詩集「すり傷とかさぶた」

ふるは ゆう
現代文学
現代詩