COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２７４話

　——ゴッ


　剣は坂本の両腕の骨にまで達した。

　刃が右肩の上に覆い被さり、尚も体ごと押し込む。



　グググッ…


　食い込んだ刃を押し返そうと、全身から力を振り絞る。

　顔を歪ませる坂本とは裏腹に、敵の顔は涼しげだった。

　まだ、余力を残しているようでもあった。

　このままでは押し切られる。

　焦る感情の中で、坂本は地面の性質を変化させる。


　サンド・シェイク


　砂。

　坂本の足元には、真砂土のような粒の細かい土が広がっていた。

　元々敷石が敷かれ、砂利や石の多かった地面の性質がいつの間にか「姿」を変えていた。

　まるで砂浜の上にいるかのような柔らかい土壌が、水面のように柔らかな曲線を描いていた。

　“攻撃を防ぐ”だけが防御ではない。

　自らのテリトリーに侵入してきた相手を、どのように対処するか。

　その「手札」は、すでに何枚か用意してあった。

　何度も言うが、坂本は地属性の天使だ。

　砂や石を自由に扱うことができ、土で構成された地面を、意のままに操作することができる。

　自らの体を強化するのと並行し、周りの地面の「構造」そのものを変えていた。

　サンド・シェイクは、周りの地面の形状を“丸ごと変える”ために使用していた。


　——そう、地面の中を、丸ごと「空洞」にするため。