COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

獄炎蝶

第２５９話

　「ゲホッ…ゲホッ…！」

　「大丈夫？！」


　無理やり移動させられ、真琴は着地に失敗していた。

　胸を強く打っていた。

　しかしそうは言っていられない。


　異常事態。


　当初の予定にはない不測の事態が起こっている。

　相手が悪魔であれ何であれ、対処すべき問題は一つ——


　天守閣の屋根から降ってくる視線。

　いくつかのストーン・タッチを介して地上へと降り立った夜月たちだが、着地と同時に敵のいる方角を見た。

　天守閣を覆っていた氷は、氷煙を上げながら徐々に溶け始めていた。

　凄まじい熱気が立ち込めていた。

　乾いた空気が、流れるように周囲を横断していた。

　熱波とも呼ぶべき空気の“圧力”が、地上の低いところまで及んでいた。


　「悪魔」は、夜月たちを見下ろしていた。

　

　戦いはいつ起こるかわからない。

　誰もが、その心構えを持っている。

　目の前に現れた悪魔もそうだ。

　街中では、いつクリーチャーや“ソルダードクラス”の悪魔と出くわすかもわからない。

　ただ、そうだとしても想定外のことが３つあった。


　１つは、球体の持つ性質。

　２つ目は、敵の戦闘力。

　そして３つ目が、天守閣に開いていた断層の原因。


　いくつかの要素を切り離して考えてみても、合点がいかない部分がいくつかあった。

　断層自体は特に珍しくもないが、今回このエリアで発生している断層の大きさは標準なものに比べてはるかに大きい。

　それが外側から開いたのか、内側から開いたのかによっても事情がかなり変わってくる。

　“不可解”だった。

　敵の正体が未知数である上に、雪月花のシールドをいとも容易く掻い潜ってきたあの威力。

　そもそも、シールドを掻い潜ってくるということの事実が、夜月たちの頭の中に重くのしかかっていた。

　その可能性を頭に入れていたのは確かだが、あらゆる選択が後手に回ってしまった。

　真琴が弓を引けなかったのも然り。