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深淵からの使者
第222話
しおりを挟む(…攻撃?いや、それにしては…)
最初、それがキョウカのシールドを穿つためのものであり、何らかの手段によって投じられた“攻撃”であると捉えていた。
それがもっとも自然な考えだった。
ただ、予測していない魔力の流れが視界に現れた時、それがどこから来たものであるかを咄嗟に判断できなかったのも事実だ。
感情は揺れていた。
少なくとも、イレギュラーな出来事に対する反応が、この場にいる者たちの思惑の外に確かな「焦り」を運んでいた。
真琴とて例外ではなかった。
それでも咄嗟に弓を構えたのは、遅れてくる思考と判断のそばで、敵の“気配”を察知したからだった。
ただ、その気配が確かな実線を帯びるには、あまりにも「時間」が“無さすぎた”。
ゴボッ
何かがこぼれる音。
それは繊細な肌触りを含んでいて、かつ重厚だった。
破裂したわけではない。
何かが、“破れた”わけではない。
しかし——
キョウカの意識は、断層の表面に向けられていた。
真琴と同様、シールドを壊した「物体」が、“シールドを壊すための攻撃である”と、判断していたがためだった。
キョウカの次なる意識は、「シールドの修復」に向けられていた。
雪月花が破損した箇所を治すように目まぐるしい速度で収縮したのは、その意識が、”破壊された“という認識の最短距離に紐付いていたからだった。
その判断自体は間違いではなかったと言えるだろう。
この場にいる誰もが、断層の内部を塞ぐために意識を注力したはずだ。
シールドが破壊された直後の、取るべき一つの行動としては。
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