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深淵からの使者
第221話
しおりを挟むギュルッ
回転するように、氷の表面が中心に滑る。
氷の中から飛び出してきた魔力を封じ込めるように、圧縮される質量が、白く濁る氷塊に犇く。
さざめく青。
火花のようにうねる粒子。
きめ細やかな模様の変化が、空間の中を泳いだ。
躍動する花の輪郭が、しなやかな線の内側に鋭い弧を描いた。
空を駆ける線。
その軌跡は、まるで空を切り裂く“刃”だった。
坂本の視線の先にあったのは、チサトの風域によって強化状態にあった氷の“層”が、何の前触れもなく綻んでいく「様子」だった。
柔らかい水の中を進むように飛び出してきた鋭利な”物体”は、空間に線を描くように、濁りのない軌道をサッと伸ばしていた。
バッ
臨戦態勢を取ったのは、真琴だ。
彼女は、謎の飛翔物からもっとも近い場所にいた。
坂本と同様、真琴も瞬時に認識していた。
“それ”が断層の内側から来たものであること。
純度の高い魔力を帯びていること。
弓の弦を指にかける。
その動作の胸中にあったものは、謎の飛翔体が、どんな「性質」を持っているかだった。
何らかの意思が働いているものに違いはない。
氷を穿ったエネルギーの向きや大きさを見て、思考を張り巡らせる。
視線は飛翔体を追う。
ただし、意識は断層の内側から逸らさずにいた。
穴の空いた雪月花の中心。
その、——奥からは。
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