COLOR CONTACT 〜『堕天使』と呼ばれた最強の悪魔の血を引く女子高生は、平凡な日常を取り戻したい〜【1巻】

霊術院出のエリート

第１８５話

　グンッ


　重力を利用した飛行だ。

　そして、魔力を使った跳躍。

　矢とは別の方向に進む力が、鋭い曲線を描く。

　霧雨の射程距離は、環境によっては数㎞程度にも及ぶ。

　ただし遠ざければ遠ざかるほど威力は落ちる。

　「速度」も同様に。


　進行方向に向かって翼を動かしながらも、矢の放物線の“外側”のラインへと移動する。

　矢は逃げるクリーチャーを追いかけた。

　地上から放出された数千本もの矢は、地上に降る雨のように膨大な“水雫”となって、あたり一面を覆った。

　１つ１つの大きさは粒のように小さく、それでいて“尖っている”。

　粒の核にはキョウカの魔力が押し固められていた。

　彼女の魔力は空間内の水蒸気を瞬時に凝固できる冷却性(結晶性)を持つ。

　そして「水分」が含まれる空間内のエネルギーを媒介し、氷(結晶)の密度を継続的に強化できる。

　『霧雨』の射程距離が数㎞に及ぶのは、大気中の「水素」を利用できるためだ。

　仮にここが「海」ならば、その威力も“強度”も、地上とは比べ物にならないほどの大きさになっただろう。


　五月雨江を介したエネルギーの放出は、巨大なエネルギーの「塊」を粒状に分散させる“変換装置”の役割を担っていた。

　一個の巨大なエネルギーを分散させることで、広範囲に及ぶ攻撃を展開できる。

　単位空間あたりの威力は減少する代わりに、空間をより広く使うことができる。

　クリーチャーを追う無数の粒子。

　それは水の流れのように、縦横無尽に空中を駆け巡る。